I:不育症・習慣流産
Q. 不育症とはどういう状態ですか?不妊症とは何が違いますか?
不育症とは、妊娠はできるのに、繰り返し流産・死産・早期新生児死亡を繰り返す状態のことです。一般的に2回の流産をした場合を「反復流産」、3回以上の流産をした場合を「習慣流産」と呼び、これらの総称を「不育症」として検査・治療の対象とします。
| 不妊症 | 不育症 | |
|---|---|---|
| 問題 | 妊娠できない | 妊娠できるが継続できない |
| 定義の目安 | 1年(または年齢によって6か月)妊娠しない | 2回以上の流産・死産 |
| 主な検査 | 排卵・卵管・精子など | 血液凝固・免疫・子宮形態・染色体など |
不育症と不妊症が重なるケースもあります。流産を繰り返した経験がある方には、まずは不育症の検査をご案内しています。
Q. 不育症になりやすい人にはどんな特徴がありますか?流産を繰り返す原因を教えてください
不育症の原因は複数あり、複合している場合も少なくありません。
| 原因 | 割合(目安) |
|---|---|
| 胎児・胚の染色体異常(偶発的) | 約60〜70% |
| 子宮の形の異常(子宮奇形・粘膜下筋腫) | 約5〜10% |
| 抗リン脂質抗体症候群(血液凝固異常) | 約10〜15% |
| 夫婦いずれかの染色体異常(均衡型転座など) | 約5〜10% |
| 内分泌異常(甲状腺・プロラクチンなど) | 約5〜10% |
| 原因不明 | 約30〜40% |
「なぜ流産が続くのかわからない」という方も多いですが、検査で原因が判明する場合は治療によって改善が期待できます。
Q. 不育症の検査にはどんなものがありますか?費用と保険適用も教えてください
| 検査 | 調べること |
|---|---|
| 抗リン脂質抗体検査(ループスアンチコアグラント・抗カルジオリピン抗体など) | 血液凝固異常(血栓ができやすい状態) |
| 血液凝固因子(第XII因子・プロテインS/Cなど) | 血栓リスクの評価 |
| 子宮形態検査(超音波・子宮鏡・MRIなど) | 子宮奇形・筋腫・ポリープ |
| 染色体検査(夫婦両方) | 均衡型転座など遺伝的な原因 |
| 甲状腺機能検査(TSH・FT4) | 甲状腺機能低下症・亢進症 |
費用は検査の組み合わせによって2〜10万円程度と幅があります。一般的な採血(抗リン脂質抗体・甲状腺など)や超音波・子宮鏡検査は保険対応。詳しくは医師にご相談ください。
Q. 不育症の治療法を教えてください(バファリン・ヘパリン療法など)
抗リン脂質抗体症候群(APS)の場合:低用量アスピリン(バファリン等)とヘパリン注射を組み合わせた「アスピリン・ヘパリン療法」が標準治療です。妊娠が確認されたらすぐに開始し、妊娠後期まで続けます。
子宮の形の異常の場合:子宮中隔などは手術で切除することで流産率の改善が期待できます。
甲状腺機能異常の場合:甲状腺ホルモンの補充(バセドウ病では薬で甲状腺を抑制)で妊娠維持の環境を整えます。
血液凝固因子の異常の場合:低用量アスピリンとヘパリン注射を妊娠中も継続する治療が行われることがあります。
染色体異常の場合:夫婦の染色体に均衡型転座がある場合は、PGT-SR(構造異常の着床前検査)を検討することがあります(自費)。
Q. 流産後、いつから次の妊娠・治療を再開できますか?
流産後は子宮が元の状態に戻るまで1〜2か月かかります。通常は流産後に1〜2回生理が来た後から、次の妊娠・治療を試みることができます。
| 流産の方法 | 次の妊娠・治療の目安 |
|---|---|
| 自然流産(完全) | 次の生理後から(1〜2か月後) |
| 手術(子宮内容除去術) | 次の生理後から(1〜2か月後) |
| 薬剤による流産処置 | 次の生理後から(医師の判断による) |
精神的な回復には個人差があります。体と心の両方が準備できたときに、医師と相談しながら決めましょう。
Q. 不育症治療に保険は使えますか?費用はどのくらいですか?
保険適用になるもの(一部):
- 一般的な採血(甲状腺・抗リン脂質抗体・凝固因子など)
- 超音波検査・子宮鏡検査
- 染色体検査(条件あり)
- ヘパリン注射(確定診断がある場合)
自費になるもの:
- PGT-SR(着床前染色体構造異常検査)
- アスピリン内服
費用の目安は、原因検索の検査だけで2〜5万円、ヘパリン注射を妊娠中継続する場合は1か月で数万円程度かかることがあります。自治体や企業の医療保険で助成が受けられる場合もあるため、加入している保険やお住まいの自治体の制度もご確認ください。
Q. 不育症の治療で出産できた方はいますか?妊娠を継続できる可能性を教えてください
はい、不育症の治療を経て出産された方は多くいらっしゃいます。
不育症の方が原因に応じた治療(アスピリン・ヘパリン療法など)を受けた場合、次の妊娠での出産率は70〜80%程度まで改善するとされています(原因不明の場合でも60〜80%)。
特に抗リン脂質抗体症候群では、アスピリン・ヘパリン療法により大きく改善することが複数の研究で示されています。
「2回・3回流産してしまったから次も絶対に無理」ではありません。原因を調べ、適切な対処をすることで妊娠継続の可能性は高まります。
Q. 子宮内膜症があると流産しやすくなりますか?
子宮内膜症と流産リスクの関係については、研究によって見解が分かれており、現時点では「子宮内膜症があれば必ず流産しやすくなる」とは言えません。
ただし以下の点で流産リスクへの間接的な影響の可能性は考えられます:
- チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症):卵巣機能の低下やAMH値の低下を引き起こすことがある
- 骨盤内の炎症・癒着:子宮の血流や着床環境に影響を与える可能性
- 内分泌環境の変化:プロゲステロンへの抵抗性(黄体機能不全)が流産リスクに関与するという報告がある
子宮内膜症がある方で流産を繰り返している場合は、内膜症の治療と不育症の検査を並行して進めます。
Q. 抗リン脂質抗体症候群(APS)とは何ですか?不育症との関係を教えてください
抗リン脂質抗体症候群(APS)は、血液中に「抗リン脂質抗体」という自己抗体が持続的に存在し、血栓ができやすくなる自己免疫疾患です。
不育症との関係では、APSがあると胎盤の血管に微小な血栓が形成され、胎盤機能が障害されることで流産・死産・早産・胎児発育不全などを引き起こしやすくなります。
主な検査項目:
- ループスアンチコアグラント(LA)
- 抗カルジオリピンIgG・IgM抗体
- 抗β2GPI抗体
いずれかが「12週以上の間隔をおいた2回の検査で陽性」であれば診断基準を満たします。妊娠前から低用量アスピリンを開始し、妊娠が確認されたらヘパリン注射を追加します(アスピリン・ヘパリン療法)。
Q. 不育症の検査・治療中も不妊治療(体外受精など)を続けられますか?
はい、並行して進められる場合があります。不育症の検査は採血・超音波が中心であり、不妊治療のスケジュールと並行して行えることがほとんどです。
- 胚の染色体異常が主な原因と考えられる場合:PGT-Aと体外受精を組み合わせて、染色体正常胚のみを移植することで流産率の低下が期待できます
- 抗リン脂質抗体症候群の治療中:アスピリン・ヘパリンを継続しながら移植に進むことが可能です
- 検査が完全に終わる前:年齢が高い方や残り時間が少ない方は、検査と並行して治療を進めるケースもあります
「不育症の検査が終わるまで体外受精を待つべきか」は、年齢・これまでの経緯・原因の見立てなどによって判断が変わります。医師と相談しながら最も効率的な進め方を見つけましょう。



