PGT-A/SRは、体外受精で作成した胚の染色体を移植前に調べる検査です。染色体の異常を持つ胚の移植を避けることで、流産リスクの低減や着床率の向上を目指します。
目次
PGT-Aとは
PGT-A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)とは、体外受精・顕微授精で作成した胚盤胞から一部の細胞を採取し、染色体の「数の異常(異数性)」を調べる検査です。
ヒトの細胞は通常46本(23対)の染色体を持っていますが、染色体の数が過不足している胚(異数性胚)は着床しにくく、着床しても流産につながることが多いとされています。PGT-Aを実施することで正常な染色体数を持つ胚を選んで移植できるため、流産リスクの低減・胚移植あたりの妊娠率の向上が期待されます。
なお、PGT-Aは先進医療B(保険診療との混合診療が認められた先進的な医療技術)に位置づけられており、全国でも限られた数施設しか先進医療として行うことが出来ません(2026/4/1現在全国で4施設)。北海道内には先進医療として行うことのできる施設はありません。実施するためには日本産科婦人科学会への申請・承認が必要です。
PGT-SRとは
PGT-SR(Preimplantation Genetic Testing for Structural Rearrangements)とは、染色体の「構造の異常(相互転座・ロバートソン転座など)」を調べる検査です。
夫婦のどちらかに均衡型の染色体構造異常がある場合、作成された胚に不均衡な染色体異常が生じる可能性があります。不均衡型の染色体異常を持つ胚は着床不全や流産の原因となるため、PGT-SRによって移植に適した胚を選択することで、流産リスクの低減と健康な赤ちゃんの誕生を目指します。
適応条件(日本産科婦人科学会基準)
PGT-A/SRは、日本産科婦人科学会が定めた基準に基づき、対象となる方が限られています。ご希望の方は担当医師にご相談ください。
PGT-Aの対象となる方
2026年6月現在、学会細則により以下の3つの条件のいずれかに該当する方が対象となりました。
- 反復する胚移植の不成功:直近で2回以上の胚移植不成功の既往がある不妊症の夫婦(連続でなくても可)
- 反復する流産・流死産:2回以上の流死産(生化学的妊娠を除く)の既往がある不育症の夫婦
- 高年齢不妊症:女性年齢35歳以上を目安とする夫婦(2025年9月に新たに追加された適応条件)
PGT-SRの対象となる方
- 夫婦のいずれかに、均衡転座(相互転座・ロバートソン転座など)をはじめとする染色体構造異常が確認されている方
- 流産回数や不妊治療の経験の有無にかかわらず対象となります
治療費は自費診療
保険診療における大原則として混合診療禁止というルールがあります。保険診療と自費診療が混在する治療を行う際には、本来保険が利く医療行為も自費診療としなければならないというルールが存在します。
PGT-A/SRは自費診療のため、PGT-A/SRを行うための排卵誘発・採卵・胚培養についても自費診療となり全額自己負担となります。またPGT-A/SR後に行う胚移植も同様に自費診療となります。
このことは、年齢要件や保険での体外受精の回数が残っている場合でも、自費診療であるPGT-A/SRを行う際には、それにかかわる治療はすべて保険適用とならないことに注意が必要です。
検査の流れ
| STEP 1 | 体外受精・採卵 通常の体外受精・顕微授精と同様に採卵を行い、受精させます。 |
|---|---|
| STEP 2 | 胚盤胞培養 受精卵を胚盤胞(受精後5〜6日目)まで培養します。 |
| STEP 3 | 細胞採取(生検) 基準を満たした胚盤胞から数個の細胞を採取します。顕微鏡下で胚本体へのダメージを最小限に抑えた方法で行います。 |
| STEP 4 | 胚の凍結保存 検査結果が出るまでの間、胚を凍結保存します。 |
| STEP 5 | 外部検査機関での解析 採取した細胞を専門の検査機関に送り、染色体の解析を行います。結果が出るまで約2〜4週間かかります。 |
| STEP 6 | 結果の確認・移植計画 検査結果をもとに担当医師と移植する胚を決定します。 |
| STEP 7 | 凍結融解胚移植 移植可能と判定された胚を融解し、子宮に移植します。 |
検査結果について
検査結果は以下の3つに分類されます。
| 判定 | 内容 |
|---|---|
| 移植可能(Euploid) | 染色体数が正常と判定された胚。移植の対象となります。 |
| 移植不可(Aneuploid) | 染色体の異数性が確認された胚。移植は行いません。 |
| 再検査(Mosaic) | 正常細胞と異常細胞が混在している胚(モザイク胚)。担当医師と相談のうえで対応を決定します。 |
注意事項
- すべての胚が移植可能とは限りません。検査に提出したすべての胚が移植不可と判定される可能性があります。
- 妊娠を保証するものではありません。移植可能胚を移植しても、必ずしも妊娠・出産に至るわけではありません。
- すべての染色体異常を検出できるわけではありません。PGT-Aは数の異常(異数性)を主な対象としており、一部の構造異常や単一遺伝子疾患は検出できません。
- 保険適用外(自費診療)となります。PGT-A/SRは自費診療となり、当院では先進医療としても認可を受けていないため民間保険の先進医療特約等での支払いを受けることもできません。
費用について
PGT-A/SRは先進医療B(自費診療)となるため、検査にかかる費用は全額自己負担となります。詳しい費用については、受診時に担当医師またはスタッフまでお気軽にお問い合わせください。
日本産科婦人科学会の解説動画
PGT-A/SRについて、日本産科婦人科学会が患者さん向けの解説動画を公開しています。検査を検討される方はぜひご覧ください。
- 動画①「不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A・SR)について」
- 動画②「PGT-Aの検査対象をなぜ限定しているのか」
▶ 日本産科婦人科学会 PGT-A/SR 解説動画ページはこちら



