卵管鏡下卵管形成術(FT手術)
FT手術は卵管閉塞・狭窄を解消するための手術です。解消することができれば自然妊娠を目指すことができます。卵管閉塞のために、体外受精しか妊娠する方法がないと言われた方でもFT手術をすることで自然妊娠を目指せる可能性が出てきます。
目次
FT手術の特徴3つ
- 負担の少ない日帰り手術
- 自然妊娠を期待できる
- 健康保険が適用される
はじめに — 卵管の役割と閉塞の影響
卵管は三つの重要な仕事をしています。ひとつは卵巣から排卵した卵子を卵管の先端である卵管采でキャッチして回収することです。ふたつめは膣で射精された精子が膣→子宮→卵管と移動していき、卵管采のそばにある卵子と出会うための通り道としても機能します。そして三つめは、卵管の先端で出会った精子と卵子が受精したのちに、ゆっくりと子宮に運ばれていきながら成長して、子宮に戻ってくるための通り道としても機能します。成長して子宮に到達した受精卵(胚)が子宮に着床すると、妊娠になります。

このように卵管は精子と卵子が出会う場所であり、出会った精子と卵子が受精して胚になり、胚が成長する場所でもあり、自然妊娠には欠かすことのできない大切な部位であると言えます。
卵管が閉塞したり、狭窄(狭くなって通りが悪くなる)したり、癒着(卵管の先端である卵管采が癒着)を起こしたりすると、卵子や精子、受精卵が卵管を通過できない状態となり、不妊の原因となります。一般的に、女性不妊に占める卵管因子(卵管が閉塞/狭窄/癒着していることが原因の不妊症)の割合は約30%前後と、不妊の原因として最も頻度の高い原因であることが報告されています。
両側の卵管が閉塞している場合には自然妊娠は望めなくなるので、卵管を使用せずに妊娠する方法としては高度生殖医療である体外受精を選択するしかなくなります。片側の卵管のみの閉塞の場合には自然妊娠の可能性は残りますが、閉塞側の卵巣から排卵した周期での妊娠は望めなくなるので、妊娠確率が1/2になってしまいます。
この閉塞した卵管の通りを改善する方法として行うのが、『 卵管鏡下卵管形成術(FT) 』です。
卵管鏡下卵管形成術(FT)は、閉塞/狭窄した卵管を開通させて自然妊娠を望みたいという方に行う治療法です。
FT手術の適応

FT手術が適応となるかどうかは、卵管閉塞や狭窄が起きている「部位」によって異なります。卵管の中でも子宮に近い部分(近位卵管)での閉塞・狭窄はFT手術の対象となりますが、卵管の先端側(膨大部)での閉塞や、卵管に水がたまった状態(卵管留水腫)の場合は対象外となり、体外受精や腹腔鏡手術が望ましい場合があります。まず正常な卵管・卵巣の状態を確認したうえで、適応・非適応となるケースをご説明します。
適応になる方

- ① 近位卵管(子宮に近い部位)に、閉塞や狭窄を認める方
- ② 卵管が閉塞/狭窄しているものの、タイミング療法や人工授精による妊娠を希望する方
適応にならない方


- ③ 卵管膨大部(卵管の一番先端に近い部位)に閉塞や狭窄を認める方
- ④ 卵管留水腫(卵管に水がたまっている状態)を認める方
⇒ 体外受精や腹腔鏡手術が望ましいです
卵管鏡下卵管形成術(FT)とは
卵管鏡下卵管形成術(FT)とは、卵管が閉塞又は狭窄していることで卵子や精子が卵管を通過することが困難である卵管性不妊の方を対象にした内視鏡治療です。この治療をすることで、タイミング療法や人工授精による妊娠率を改善させるために行います。
この手術の特徴は、お腹をメスなどによる切開を行うことなく施行できる手術であり、膣から専用カテーテルを使用して行うことのできる治療のため身体への負担が少ないのはもちろん、治療時間も30〜40分程度なので外来での治療が可能です。また、治療と同時に卵管鏡で卵管内の状態を確認することもできることも大きな特徴と言えます。
「卵管が閉塞しているから、体外受精でしか妊娠はできません」と診断を受けた方であっても、FTをすることで卵管の狭窄や閉塞が改善されれば、術後に自然妊娠を期待することが出来ます。
具体的には、極細(1mm以下)の卵管鏡(卵管を観察するカメラ)と一体のカテーテルと呼ばれる細い管を膣から子宮、そして卵管入口まで挿入し、卵管鏡を内包したバルーンカテーテルを卵管内に挿入します。カテーテル内に内蔵されたバルーンを卵管内で押し進めていくと同時に、内包されている卵管鏡で卵管内の観察を行う内視鏡下手術です。こうすることで卵管の狭くなった箇所や詰まっている箇所を広げていきます。物理的に広げることが目的であり、効果は必ずしも永久的ではありません。
手術の流れ
FTに使用する器具は、FT手術専用に開発された細い卵管鏡(外径0.6mmの極細内視鏡カメラ)と、それを包むように取り囲むバルーン(風船)を内蔵した細いカテーテルを使用します。

STEP 1
静脈麻酔を施行し、麻酔が効いたことを確認した後に、左記の卵管鏡を使用していきます。

STEP 2
カテーテルを膣から子宮へと挿入し、目的の卵管口(卵管の入口)に近づけていきます。

STEP 3
子宮腔に開口した卵管の入り口から、カテーテル先端の弾力のあるバルーンを膨らませながら、ゆっくりと卵管を押し広げつつ卵管内へ進めていきます。

STEP 4
卵管鏡で確認しながら、バルーンを押し進めることにより、狭くなったり詰まったりしている卵管を拡げていきます。

STEP 5
最後に、通過障害が改善したことを卵管鏡で確認します。
手術前日・当日の流れ
手術の概要
| 手術方式 | 日帰り手術 |
|---|---|
| 所要時間 | 約30〜40分 |
| 麻酔 | 静脈麻酔(目が覚めたら手術が終わっているような感覚です) |
| 手術時期 | 月経が終了した月経開始5〜6日目頃から排卵までの時期 (排卵時期は個人差があるため、適切な日程を相談のうえ決定します) |
手術前日
手術時の誤嚥などを防止するために、お食事は手術前日の24時頃までに終わらせて、以降は禁食としていただきます。
手術当日
手術当日朝は午前6時までは少量の水分(お水のみ)はとっていただいて構いません。
| 10:00〜 | クリニックに来院。着替えをして、静脈麻酔をするために点滴の針を刺して手術に備えます。 |
|---|---|
| 11:00前後〜 | 歩いて手術室に入室して、静脈麻酔を施行した後に手術を開始します。 |
| 12:00前後〜 | 手術後はまだ麻酔が効いているためストレッチャーでベッドに戻り、麻酔がしっかり覚めるまでベッドで休んでいただきます。 |
| 16:00前後〜 | 麻酔が覚めたのちに、医師の診察・説明を聞いて、会計の後に当日の診察が終了となります。 |
診察終了後、ご自宅に戻られたのちは、お飲み物やお食事をとっても構いません。
副作用・合併症について
麻酔薬が合わないとアレルギーや、術後に気分不良が生じる可能性があります。術中の合併症としては稀に卵管穿孔を起こすことがありますが、細いカテーテルのため通常は経過観察のみで様子をみることになります。また術後に腹痛や少量の出血、感染を起こす可能性もあります。
Q&A
Q. 卵管因子なら全てFTの対象となりますか?
卵管采(卵管の一番先端)の部分で閉塞している場合や卵管水腫があると診断された場合には、FT手術の適用とはならない場合があります。
Q. 手術は痛くないですか?
当院で行うFT手術は、静脈麻酔、局所麻酔薬を使用して行います。個人差はあるものの、基本的には痛みはほとんど感じません。目が覚めたら手術は終わっているような感じです。
Q. FT実施後の妊娠率はどのくらいですか?
卵管の開通率は90%以上*で、妊娠率は30〜35%*と言われていますが、これは年齢によっても大きく異なります。FT手術後に6か月程度経過しても妊娠しない場合には体外受精を考慮することをお勧めします。
Q. FTをすれば、必ず妊娠しますか?
FT手術をしても卵管の開通ができない場合や、再開通に成功しても術後早期に卵管の再閉塞や再狭窄が生じる場合もあります。また卵管因子以外の不妊原因がある場合にも、妊娠に至らない場合があります。
*出典:「わが国における生殖補助医療の実態とその在り方に関する研究(1999年)」「産科と婦人科 vol.63 No.1(1996年)」
手術にかかる費用について
- 保険適用のため自己負担は3割となります。
- 費用の概算として、片側を治療する場合で保険適用の3割負担として約14万円、両側を同時に治療する場合は約28万円の費用が発生します。
- 上記費用は高額療養費の対象となります。事前に限度額適用認定証を申請の上、提示いただければ限度額までのご負担となります(限度額は保険加入者の所得により異なり5段階あります)。
- マイナンバーカードを保険証として使用している方については、事前申請は不要となりますので、当院受付にご相談ください。
- FT手術を行ったにもかかわらず、卵管疎通性が改善されない場合でも費用は発生します。
- FT手術は保険診療下での手術になるので、不妊治療を始める前に民間の生命保険会社で医療保険に加入していた場合、「手術給付金」の支払い対象となります。詳細はご契約されている保険会社にご確認ください。
高額療養費制度について
高額療養費制度とは、1か月(1日から月末)の保険診療に伴う医療費の自己負担額が、一定の額(自己負担限度額)を超えて高額になったとき、申請により超過分が支給される制度です。自己負担限度額は所得によって異なります。詳しくは『高額療養費制度について』のページをご覧ください。
さいごに~ さっぽろARTクリニックn24でのFT手術
卵管が閉塞/狭窄している場合でも、自然妊娠を目指したいという方に、体に負担を少なく、日帰りの手術で、かつ保険適用下で行うことのできるのがFT手術です。
札幌市内において開腹手術を伴わずに子宮鏡下でのFT手術を行うことができる施設は限られています。その中でも当院は経験豊富な医師によるFT手術を行うことができる施設です。



