H:男性不妊
Q. 男性不妊とはどのような状態ですか?なりやすい人の特徴と原因を教えてください
男性不妊とは、男性側の原因によって妊娠が難しくなっている状態です。不妊カップルの約半数に男性側の問題が関与しているとされており、決して珍しいことではありません。
主な原因:
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 造精機能障害 | 精子の数が少ない(乏精子症)・動いている精子が少ない(精子無力症)・精子の形状が悪い(奇形精子症)・精子がいない(無精子症)など |
| 精路通過障害 | 精子は作られているが、通り道(精管・精巣上体)が詰まっている |
| 性機能障害 | 勃起障害(ED)・射精障害など |
| 精索静脈瘤 | 陰嚢内の静脈が瘤になり、精巣の温度が上がって精子の質が低下 |
なりやすい人の特徴:
- 喫煙・過度な飲酒
- 長時間の坐位(デスクワーク・長距離ドライバーなど)
- 精巣への熱刺激(長時間の入浴・サウナ・きついサポーターなど)
- 過去の性感染症(クラミジア・淋菌など)
- ストレス・睡眠不足・肥満
Q. 精液検査はどこで・どのように行いますか?禁欲期間・持ち込み方法・基準値を教えてください
精液検査は当院でも実施しています。
検査の方法:
- 自宅で採精し、専用容器に入れて持参(採精後3時間以内を目安)
- または院内の採精室で採精
禁欲期間:最低2日〜最大7日間の禁欲が推奨されています(WHO基準では2〜7日)。禁欲が長すぎると精子の運動率が低下し逆効果になることがあります。
検査結果の主な評価項目とWHO基準値(2021年版):
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 精液量 | 1.4mL以上 |
| 精子濃度 | 1600万/mL以上 |
| 総運動率 | 42%以上 |
| 前進運動率 | 30%以上 |
| 正常形態率 | 4%以上(Kruger法) |
1回の検査結果だけで判断するのは難しく日による変動も大きいため、異常値が出た場合は2回目の精液検査を受けていただく場合もあります。
Q. 精液検査の結果が正常範囲外だった場合、どんな治療をしますか?
軽度〜中等度の場合(精子が少ない・動きが弱い):
- 生活習慣の改善(禁煙・節酒・睡眠・体重管理)
- サプリメント(亜鉛・CoQ10・ビタミンC・Eなど)による改善を試みる
- 人工授精(精子を濃縮して子宮内に注入)
- 体外受精・顕微授精(少ない精子でも受精できる)
重度の場合(精子が極端に少ない・動かない):
- 顕微授精(ICSI)が有効な選択肢
- 精索静脈瘤が原因の場合は手術(泌尿器科的治療)で改善する場合があります
無精子症の場合:精路通過障害であれば精巣または精巣上体から精子を採取(TESE・PESA)して顕微授精を行う方法があります。精子を作る機能そのものの障害の場合は状況に応じて専門的な対応が必要です。
Q. 精子の質・数を改善するためにできることはありますか?
精子の状態は生活習慣によって変化します。精子が完成するまでには約74日(約2.5か月)かかるため、改善の効果が現れるのも2〜3か月後が目安です。
改善に効果的とされる生活習慣:
- 禁煙:喫煙は精子の数・運動率・DNA損傷に悪影響。禁煙後3〜6か月で改善する可能性あり
- 節酒:過度な飲酒は男性ホルモン(テストステロン)の低下につながる
- 適切な体重の維持:肥満は精子の質低下と関係あり
- 睡眠・ストレス管理:睡眠不足は精子産生ホルモンに影響する
- 精巣を冷やす:ぴったりした下着・長時間の入浴・サウナを避ける
- 適度な運動:激しすぎる運動は逆効果の場合も
- サプリメント:亜鉛・CoQ10・ビタミンE・葉酸などが精子の質改善に有望とされる
Q. 精液検査前の禁欲期間はどのくらいが適切ですか?
精液検査前の禁欲期間は、約2〜6日間が最も適切とされています。
| 禁欲期間 | 精液への影響 |
|---|---|
| 1日未満 | 精液量が少なく、精子の総数が低くなりやすい |
| 2〜6日 | 最も安定したデータが得られる(WHO推奨) |
| 7日以上 | 精液量は増えるが運動率が低下しやすい・古い精子が混入 |
「禁欲が長いほど精子の質が上がる」わけではないため、極端に長い禁欲は避けてください。検査当日は採精してから3時間以内に持参するか、院内の採精室をご利用ください。
Q. 無精子症でも妊娠できますか?
状況によっては妊娠を目指せます。無精子症には大きく2種類あります。
1. 閉塞性無精子症:精子は作られているが通路が詰まっているために精液に出てこない状態。手術で精子を精巣または精巣上体から直接採取(TESEまたはPESA)することで顕微授精(ICSI)が可能です。
2. 非閉塞性無精子症:精子を作る機能自体に問題がある状態。精巣から微量な精子を採取するMD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)で精子が見つかれば顕微授精が可能です。
泌尿器科(男性不妊専門医)との連携が必要になることが多いため、当院でも必要に応じて専門医療機関をご紹介します。
Q. 服用中の薬や持病が精子に影響することはありますか?
はい、薬の種類によっては精子の質・数に影響を与える場合があります。
| 種類 | 影響 |
|---|---|
| 抗がん剤・放射線治療 | 精子産生への重大な影響。治療前の精子凍結を強く推奨 |
| 一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬) | 精子の運動に影響する場合あり |
| 精神科・神経科の薬(抗精神病薬など) | 射精障害や精子への影響が出ることがある |
服用中の薬がある場合は、処方元の医師と不妊治療の医師の両方に相談してください。「薬を勝手にやめる」のではなく、専門家の指示のもとで対応することが大切です。
Q. 男性不妊の治療は泌尿器科と婦人科、どちらにかかればよいですか?
男性不妊は「泌尿器科(男性不妊専門)」が専門ですが、実際の不妊治療はパートナーとともに「不妊専門クリニック(婦人科系)」で進めることがほとんどです。
| 状況 | 受診先 |
|---|---|
| 精液検査で異常が出た | まずは不妊専門クリニックで相談 |
| 無精子症・重度の男性不妊 | 泌尿器科(男性不妊専門)への紹介が必要な場合あり |
| 精索静脈瘤の手術を検討 | 泌尿器科 |
| ホルモン異常による精子の問題 | 泌尿器科 |
| 人工授精・体外受精を考えている | 不妊専門クリニック |
当院でも精液検査・男性不妊の基本的な評価を行っています。泌尿器科への紹介が必要な場合は、連携先にご紹介します。
Q. 精液量が少ない(1ml未満)と不妊に影響しますか?
精液量が1mL未満の場合は「乏精液症」と呼ばれ、不妊に影響する可能性があります。
精液量が少ない場合、精子の総数も減少し精子が卵子に到達しにくくなります。また精液が少ないと精子を守るアルカリ性の環境(膣内の酸性環境を中和する役割)が不十分になることもあります。
主な原因:
- 禁欲期間が短すぎる(採精前日に射精があった場合など)
- 射精障害(逆行性射精:精液が膀胱に逆流する)
- 精嚢の閉塞・萎縮
- ホルモン異常
まず「禁欲期間が適切だったか」を確認した上で再検査を行い、原因を探ることが大切です。
Q. 男性不妊に有効なサプリメント(亜鉛・CoQ10など)はありますか?
精子の質改善に有望とされるサプリメントがいくつかあります。ただし「確実に効く」と証明されたものは少なく、あくまで補助的な位置づけです。
| 成分 | 期待される効果 |
|---|---|
| CoQ10(コエンザイムQ10) | 精子の運動エネルギー産生をサポート・抗酸化作用 |
| 亜鉛(Zinc) | 精子産生・男性ホルモン(テストステロン)の維持に重要 |
| 葉酸 | 精子のDNA合成・品質に関与 |
| ビタミンC・E | 抗酸化作用で精子のDNA損傷を防ぐ |
| L-カルニチン | 精子の運動に必要なエネルギー代謝をサポート |
| セレン | 精子の形成・運動に関係する酵素の補因子 |
精子をつくるのに2.5か月かかるため、サプリメント等の効果を見るには飲み始めて3〜6か月後が目安です。生活習慣の改善と並行して取り組むことで、より効果が出やすくなります。



