不妊症とは?
現在では6組の夫婦のうち、1組は不妊症であるといわれています。 不妊症は決してめずらしいことではありません。不妊と言えば、昔から慣習的に女性に原因があると考えられていました。しかし近年の研究で、不妊は男性に原因があることも珍しくなく、WHOの報告では不妊原因の約50%は男性にも原因があると報告されています。
日本産科婦人科学会が不妊を『生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない』と定義しています。
日本では長く不妊症の定義は2年でしたが、2015年に日本産科婦人科学会が世界の趨勢に合わせて不妊症の定義を1年に修正しました。
治療対象は法律婚と事実婚
2022年4月より、不妊治療の多くは保険適用となりました。その適用には年齢や回数の制限がつくものもあります。その中で治療対象については『法律婚』の夫婦と、『事実婚』の夫婦が治療対象であることが明文化されました。
法律婚は、婚姻届けを提出し戸籍に夫婦であることを記載することで成立する婚姻形態です。夫婦であることを証明するには戸籍謄本を提出することで証明することが可能です。
一方で事実婚は、婚姻の意思のある二人が、自分たちは事実婚であると言えば事実婚が成立すると言えます。しかし、それを第三者に証明するのは、そのままでは難しい問題です。事実婚を証明する方法にはいくつかありますが、手間と労力(費用を含む)をかけずに最も簡単に証明する方法としては、住民票の提出があります。同居を前提として、夫婦どちらかを世帯主として住民票を届け出、他方を妻(未届)、あるいは夫(未届)として住民票の届け出をしたうえで、住民票を取得すると二人が世帯主と夫/妻(未届)という住民票を取得することができます。この住民票が二人が事実婚であると証明できる一番簡単な証明書類と言われています。
事実婚のご夫婦につきましては、治療を行う際には、それぞれの戸籍謄本(重婚の確認を目的として)、事実婚を証明する住民票、事実婚夫婦治療同意書の提出をお願いしています。
不妊症の原因
不妊症の原因は大きく分けて二つあります。女性に原因がある場合と男性に原因がある場合です。しかし、夫婦としての不妊のパターンは4パターンになります。
- 女性に原因がある場合
- 男性に原因がある場合
- 男性、女性両方に原因がある場合
- 各種検査をしても原因が見つからない場合(原因不明)
治療を行うために、まずはしっかりとした原因検索が必要になります。原因がはっきりした場合に治療方法(やるべきこと)が決まります。そのためまずは、徹底的に原因検索をすることが治療方針決定のための第一歩となります。
女性不妊の原因
- 卵巣に問題がある場合: 排卵障害、卵巣機能低下
- 卵管に問題がある: 卵管閉塞
- 子宮に問題がある: 子宮奇形、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮腔癒着
- その他: ホルモン異常、子宮内膜症
男性不妊の原因
- 造精機能障害: 無精子症、乏精子症、精子無力症、精索静脈瘤
- 性機能障害: ED(勃起不全)、射精障害
- 精路通過障害: 無精子症、逆行性射精
- その他: ホルモン異常
不妊症の検査
女性不妊の検査は、いつでも行える検査と月経周期に合わせて行う検査に加えて妊娠中のリスクを事前に回避するための検査があります。
いつでも行える検査
- 超音波検査
- クラミジア/淋菌検査
- アンチミューラン管ホルモン(AMH)
- 男性ホルモン、プロラクチン、甲状腺機能検査
月経周期に合わせて行う検査
- 月経2~4日目: LH-RHテスト
- 月経終了直後: 子宮鏡、卵管造影検査
妊娠中のリスクを事前に回避するための検査
- 感染症採血(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)
- 子宮頚部細胞診
- 風疹抗体検査
- 甲状腺機能検査
- 糖尿病関連検査
男性不妊の検査
- 精液検査 ※3~7日の禁欲期間を設定
- 感染症採血
- ホルモン採血(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)