妊娠と新型コロナウイルスワクチンについて
2月に入り、冷え込みも厳しい今日この頃ですが、札幌市でもまもなく医療従事者の優先接種が始まります。それに続いて高齢者や一般の人の接種と続くわけですが、僕のクリニックにも多くの医療従事者が通院されていて、看護師さんやパラメディカルの方が心配して新型コロナワクチンについて聞かれることが多くなりました。”妊娠していて新型コロナウイルスワクチンを打っても大丈夫なのか?” ”新型コロナウイルスワクチンを打って、そのあとに妊娠しても大丈夫なのか?”です。
現時点で言えること、そして接種するか?しないか?を判断するときに、どのように考えればよいのか?を書いてみたいと思います。
現時点で言えることは、、、
はじめに結論を一言で書くと“大丈夫とは言えません”となります。
これは”危険です”という意味ではありません。”わからない”という意味になります。
しかし一言では言い尽くせないのです。以下にその理由を書いていきます。
医師が大丈夫というためには、、、
僕たち医師が新型コロナウイルスワクチンに限らず“〇〇〇は妊婦さんに使って大丈夫ですか?”と聞かれた場合に、“大丈夫です”というためには、科学的に証明されたデータ(前方視的な大規模試験)がないことには“大丈夫です”と言えません。これはつまり〇〇〇を使った妊婦さんが数千人(数万人)と〇〇〇を使わなかった妊婦さん数千人(数万人)の比較データが必要になりますが、実際には妊婦さんに“試しに〇〇〇を使ってみる”ということ自体が倫理的になかなか困難であるという現実があります。
そのため、新しいものは新型コロナウイルスワクチンに限らず、ほかに新しい薬などについてもなかなか“妊婦さんが使って大丈夫です”と言うことはできません。
妊娠と新型コロナウイルスワクチンに関するデータ
さて、新型コロナウイルスワクチンですが、世界中を見てもまだ接種を開始して数か月であり、副作用の発生率もそうですが、妊婦さんに接種して有害事象が起こるか?(例えば、、、流産しやすいとか、何らかの奇形の発生率が高いとか、、)についてのデータはありません。もちろん大規模試験のデータもありません(妊婦と授乳婦に関する大規模試験はこれから臨床試験が計画されています)。だから世界中のどんな医師も“妊婦に新型コロナウイルスワクチンを接種しても大丈夫です”とは言えないのです。
結局のところ、ワクチン接種の判断をするにはどうすればいいのか?
ではどうすればいいの?となるわけですが、本当に難しい判断になりますが今ある情報で接種の判断を自分でするしかありません。
僕が接種するかしないかの判断をする際に考えてほしいことは、接種することによるデメリット(副作用や有害事象)だけではなく、接種しないことによるデメリット(新型コロナウイルスに感染したり、重症化するリスク、感染後の後遺症など)の両方を自分の中で天秤にかけて考えて欲しいなと思っています。さらに言うなら、接種することによって得られるメリット(感染のリスクを減らせること)と、接種しないことによって得られるメリット(ワクチンによる副作用や有害事象が発生しない)を天秤にかけて考えて欲しいと思っています。
つまり、新型コロナワクチンを接種することによるデメリットとメリット、接種しないことによるメリットとデメリット、、、この4つを天秤にかけて考えたうえで接種をするかしないかを決めてほしいと思っています。どちらを選択するかは個人個人の価値観や考え方によって決まると思います。
まとめ
新型コロナウイルスワクチンの情報は、世界中から日々新しい情報が発信されています。その時点で得られる情報をしっかり入手しながら、しかし一部のクローズアップされた事象だけで判断せず、メリット・デメリットを総合的に鑑みてワクチン接種をするかどうかを判断してほしいと思っています。