―不育症について②―
不育症のリスク因子は抗リン脂質抗体症候群、先天子宮奇形、夫婦染色体構造異常、胎児染色体異数性、内分泌異常(甲状腺機能低下症や糖尿病など)です。
不育症患者の夫婦を調べても原因となる因子が判明するのは約30%で、約70%は胎児染色体異常によるものです。
【不育症のリスク因子】

【妊娠維持に異常をきたすもの】
*抗リン脂質抗体症候群
抗リン脂質抗体により血液凝固能が亢進し血液が固まりやすくなり、様々な血栓症をきたす疾患です。血栓による胎盤梗塞などが考えられていますが、詳細は明らかではありません。
*先天子宮形態異常
子宮は胎児発育の場で、全長は約7センチ、重量は約60~70グラムです。
子宮形態検査(経腟超音波検査、子宮卵管造影、MRIなど)で異常の有無を検査します。
特に中隔子宮、双角子宮は流産率、早産率が高く、子宮内胎児死亡や早産とも関与しているといわれています。
不育症患者の12~16%に子宮形態異常を認めます。

【胎児の発生に異常をきたすもの】
*夫婦染色体構造異常
染色体に異常があることが原因で卵子や精子に異常が生じるものです。
正常な染色体をもつ人より高い確率で染色体異常をもつ卵子や精子が形成されるため、不育症のリスク因子となります。
染色体とは体の設計図である遺伝子の集合体のことで(1本の染色体には平均で約1000個の遺伝子が含まれています)、遺伝子を次世代に伝える役割があります。
夫婦のどちらかに染色体構造異常がある場合、夫婦は健康ですが、卵子や精子ができる際に染色体の一部が入れ替わったり、染色体同士が結合したりすることが原因で早期流産につながることがあります。
不育症患者の約8~10%に染色体構造異常が認められます。

*胎児染色体異常
卵子や精子ができる過程の減数分裂時に染色体異常をきたし、正常な胚発生が進まない場合におきます。卵子ができる過程でおきるものが多いです。
精子の染色体異常発生率は約10%で、男性の加齢による影響はほとんどうけません。一方、卵子の染色体異常発生率は、若い時で約25%ですが、年を重ねるとともに上昇します。
また、ほどんどの場合、染色体異常は出生できずに初期の段階で流産してしまいます。
※当院では山本医師が不育症の専門医の資格を取得しております。
参照:病気がみえるvol.9婦人科・乳腺外科 生殖医療の必須知識 より



