『with up! 』 こどもが欲しい”という御夫婦の思いにお応えするために、原因を徹底的に調べ、ひとりひとりに合わせた最適な治療を提供いたします。

検査室だより

こんにちは。さっぽろARTクリニックn24検査室です。
今回は、卵巣刺激症候群(OHSS)です。
OHSSとは不妊治療に用いる排卵誘発薬によって多数の卵胞が発育・排卵することで、通常3~4センチほどの卵巣が薬剤の刺激により腫れ、出血、腹水や胸水の貯留、血液濃縮、嘔吐、頻尿などがおこることです。重症化すると呼吸困難、腎不全、血栓症などがおこります。卵胞数、採卵数の増加とともにOHSSのリスクは増大します。
OHSSには早期発症型と晩期発症型があり、早期発症型はhCG製剤投与後数日以内、晩期発症型はhCG製剤投与後10日以上たってから発症します。
妊娠が成立していない場合は、月経開始のころから自然に症状が軽快することが多いですが、妊娠している場合は胎盤から産生されるhCGにより、症状はさらに悪化します。

日本産科婦人科学会が行った生殖補助医療登録施設を対象とした調査によると、排卵誘発周期あたりのOHSSの発症頻度は重症が0.8%~1.5%あるといわれています(生殖・内分泌委員会報告:日本産科婦人科学学会誌2002;54:860-868(Ⅲ))。

主な自覚症状(初期症状)はおなかが張る、痛む、体重が急に増える、尿量が減る、吐き気などです。このような症状がある場合は水分を十分摂取し、激しい運動は控え、医療機関に相談するようにしましょう。

《OHSS発症のリスク因子》
☆多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方
☆hMGなどのゴナドトロピンの使用量が多くなりそうな方
☆AMH値が高い方
☆過去にOHSSを起こしたことのある方
☆35歳未満の若い方
☆やせている方

《対策案》
★OHSSが起こりにくい卵巣刺激法の選択や工夫をする(医療側)
★OHSSの自覚症状(初期症状)を見逃さない(患者さん側)

OHSSはまれなもので必ず起こる副作用ではありません。しかし、重症になると様々な合併症を起こしてとても危険な状態になります。OHSS発症には個人の卵巣の反応の差があるため、完全に予防することは難しいです。自覚症状を早期に発見し、対応することが大切です。