―移植に向けたホルモン補充周期の実際―
ホルモン補充周期の移植では、卵胞ホルモンの投与によって子宮内膜を6-8mm以上にすることが必要であると言われており、当院では基本的に8mm以上を目指しています。
生理2日目(D2)から卵胞ホルモンの投与を開始し、生理13日目から15日目(D13-15)に子宮内膜の厚さをエコーで確認します(内膜チェック)。
この時点で内膜が8mm以上あれば移植日を決定し、移植日に合わせて黄体ホルモンを投与します。
1回目の内膜チェックで8mm未満の場合は卵胞ホルモンの投与量を調節しながら追加で継続し、再度内膜チェックを行います。
ホルモン製剤には飲み薬、貼り薬(テープ)、塗り薬(ゲル)、腟座薬、注射といったように様々な投与方法があります。これらのホルモン製剤の投与は妊娠判定まで、妊娠した場合は妊娠9週まで継続します。
どの投与方法の方が良いというのはなく、それぞれ作用する為の経路が違うので投与方法によって吸収率は違いますし、個人差もあります。
また、経口投与では飲み忘れや悪阻によって内服が困難な場合や、経皮投与ではテープが剥がれたり皮膚に合わなかったりすることもあります。
当院では基本的に卵胞ホルモン補充では飲み薬と貼り薬、黄体ホルモン補充では更に腟座薬を組み合わせており、それぞれを補うように併せて使用しています。より負担の大きい注射は、内膜が厚くならずに追加で卵胞ホルモンの投与が必要な際にのみ使用しています。
2019年5月(開院)~2023年12月までの間で実施された移植は1670件、うち自然周期が15件、ホルモン補充周期が1655件でした。
ホルモン補充周期のうち、最初の内膜チェックで内膜が8mmを超えたのが1512件、8mm未満が143件でした。
そのうち内膜を厚くする目的で卵胞ホルモンを追加投与した140件のうち、115件が最終的に内膜の厚さが8mm以上になりました。
※内膜が8mmに達しなかった場合も6-7mm以上あるため移植可能と判断し、患者様の希望によっては移植を実施することもあります。
※卵胞ホルモンの追加投与後も内膜が十分な厚さにならなかった場合は投与を中止し、次周期以降に仕切り直しになります。上記のデータには含まれていません。
下のグラフは卵胞ホルモンの投与によって内膜が移植可能な厚さになった日数(D〇=生理〇日目)を表しており、そのうち追加投与日数の内訳を色分けしています。
ほとんどがD13-15の1回目の内膜チェックで8mm以上あり、8mm未満の場合もおおよそ5~7日の追加投与でD18-22には必要な厚さに到達しました。追加投与日数の最長は15日でD28の内膜チェックで移植決定となりました。
※内膜チェックの時期は休診日や患者様都合によりD13-15から前後することがあります。特に大きく日数が前後しているものはゴールデンウィークや年末年始といった長期休暇と被っていたり、体調不良等により来院ができなかったものになります。
以下は初回の内膜チェックで8mm以上あった場合と卵胞ホルモンを追加で補充して8mm以上になった場合の妊娠率になります。初回の内膜チェックで内膜が厚くなりにくい場合も8mm以上で移植を実施できれば妊娠の可能性が十分にあることが分かります。
また、8mm以上の場合も厚くなるほど妊娠率が上がるということはなく、十分な厚さがあれば安定した妊娠率になることが分かります。
※4件は双角子宮のためデータから除外
いかがでしたでしょうか。
このようにホルモン補充周期での凍結胚移植では移植に向けて適切なホルモン製剤を選択し、追加投与や仕切り直しも可能なので、できる限り患者様の希望に沿ったかたちで移植に臨むことができます。
皆さんこんにちは!
今回は移植に向けたホルモン補充周期について実際の臨床でのお話をしたいと思います。
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