-精液温度と運動率-
当院には精液を採取するためのお部屋(採精室)があり、検体提出の際は採取から処理までの時間経過や外気温の影響などを考えると採精室の使用が望ましいです。
しかし実際は男性患者の来院が困難なことも多く、その場合は自宅等で採取した精液検体をパートナーが来院時に代わりに提出しています。
そこで当院では運搬の際の外気温の影響を抑えるために、治療に使用する精液検体を持参する患者様を対象に保温容器を導入しています。
それでは保温容器導入の2020年12月から2023年9月までのデータを参考に、改めてその必要性について見ていきましょう。
以下のグラフは提出時の精液温度別の平均運動率です。
ある程度の温度になると運動率に大きな変化はありませんが、極端に温度が低いと運動率は低下してしまいます。
続けて提出方法によって精子に影響があるのかを見ていきましょう。
提出方法は採精室使用、持参(保温容器使用)、持参(保温容器なし)の3つがあります。
【平均年齢】 採精室:36.0歳、持参(保温容器使用):39.0歳、持参(保温容器なし):36.1歳
【採取から提出までの平均時間】 採精室:23分、持参(保温容器使用):125分、持参(保温容器なし):108分
以下のグラフは提出方法別の提出時の平均精液温度を月ごとに表しています。
採精室の場合は季節に関係なく平均温度が安定していますが、持参の場合は11月~4月あたりの寒い時期に温度の低下がみられ、保温容器を使用していないと更に低くなっています。
更に運動率にも影響があるのかを見てみましょう。
以下のグラフは提出方法別の平均運動率を月ごとに表しています。
温度と同様に寒い時期に持参した精液では運動率の低下が見られ、保温容器を使用していない場合は更に低下しています。
以上の結果から、保温容器は外気温の影響による精液温度の低下と、それに伴う運動率の低下を緩和していることがわかります。
皆さんこんにちは!
夏の暑さが嘘のようにすっかり寒くなりましたね。
そこで今回は精液温度と運動率のお話です。