精子の受精に向けての準備
皆さん、こんにちは!さっぽろARTクリニックn24検査室スタッフです。
今回は「精子の受精に向けての準備」についてお話します。

受精は精子が卵子の中に入って融合することで始まります。
精子は射精直後の時点では、元気に動いていても卵子の中に入って受精するという力は持ち合わせていません。
ここから卵子に到着するまでの間に、卵管の中を泳ぎながら受精に向けて大切な準備をしていきます。
“受精能獲得”は精子頭部の変化(先体反応)と尾部の変化(ハイパーアクチベーション)を起こす能力を備えることです。
精子の内側と外側両方で複雑な機能変化が起こります。
体外受精の場合であっても適切な培養液を使って培養することでこの変化を促すことが可能です。
受精能獲得をした精子はさらにハイパーアクチベーションと先体反応を起こしていきます。
“ハイパーアクチベーション”というのは精子の運動性が変化することを指し、尾部の振幅が大きく非対称な動きになるのが特徴とされています。
この運動は、卵子の周りにある透明帯という膜に入っていくときに推進力として働いてくれます。
“先体反応”は精子頭部の先端にある細胞膜同士が複数の部位で融合することでそこに含まれていた酵素(代表的なものとしてはヒアルロニダーゼやアクロシンがある)などの成分が放出されることを指します。
放出された酵素は透明帯などの卵子を包んでいる膜を溶かす作用を持っています。
この反応を起こした精子は、自らが通る道を自力で作りながら卵子へ到達します。
受精障害といっても原因はさまざまですが、受精能獲得、ハイパーアクチベーション、先体反応といったプロセスがうまく行われず受精しない場合は、人工的に精子を卵子の中へ運ぶ顕微授精という選択肢もあります。
精子と卵子の力が合わさって起こる受精は、本当に尊いものだと感じます。
それでは、読んでいただきありがとうございました!
参考書籍:柴原 浩章、はじめての精子学、第1版、中外医学社
柴原 浩章ほか、図説よくわかる臨床不妊症学 生殖補助医療編、第3版、中外医学社




