1. 二人目不妊(続発性不妊)とは?
二人目不妊とは、過去に一度でも妊娠・出産の経験があるにもかかわらず、その後、避妊をせずに定期的な性交渉を持っても、一定期間(一般的には1年以上)妊娠に至らない状態を指します。医学的には「続発性不妊(ぞくはつせいふにん)」と呼ばれています。
一人目の妊娠が自然妊娠であったか、あるいは不妊治療を経て授かったかは問いません。
多くの方が「一度妊娠できているのだから、自分のからだは妊娠できる機能がしっかり備わっているはず」「そのうち自然に授かるだろう」と考えがちです。しかし、実はこの「過去の成功体験」こそが、二人目不妊のクリニック受診を遅らせてしまう最大の要因にもなっています。
人間のからだは、数年の月日が経てば、そして一度の妊娠・出産を経験すれば、想像以上に大きく変化しているものなのです。
2. なぜ?二人目ができない「5つの主な原因」
一人目の時と現在とで、ご夫婦のからだや生活環境にどのような違いが生じているのでしょうか。二人目不妊を引き起こす主な原因をまとめると、以下のようになります。

ご自身の状況やご夫婦の生活と照らし合わせながら、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
① 加齢に伴う「卵子の質の低下」と「卵巣予備能の減少」
二人目不妊の原因として最も大きな割合を占めるのが、ご夫婦(特に女性側)の「年齢」です。 一人目を妊娠した時から、数年が経過しています。女性の卵子は新しく作られることはなく、年齢とともに少しずつ減少(卵巣予備能の低下)し、同時に卵子そのものの質もエイジング(老化)していきます。
一般的に、女性は35歳を過ぎると自然妊娠率が低下し始め、流産率も上昇する傾向にあります。「30歳の時の卵子」と「33歳の時の卵子」では、妊娠に至るポテンシャルに医学的な違いが生じているという現実を、まずは正しく知っていただくことが大切です。

上のグラフが示すように、女性の卵子の数は出生時(約200万個)から減少し続け、30代で2〜3万個、40代では1万〜1千個へと加速度的に減少していきます。一人目を出産されてからの数年間で、卵巣の中に残されている卵子の数(卵巣予備能)が大きく変化している可能性があるのです。
② 産後の骨盤内環境の変化(帝王切開瘢痕症候群など)
一度目の出産を経たことで、子宮や骨盤内の環境が変化しているケースです。 例えば、一人目を帝王切開で出産された場合、子宮の切開した部分の傷跡がくぼみとなり、そこに経血や分泌物が溜まってしまう「帝王切開瘢痕症候群(ていおうせっかいはんこんしょうこうぐん)」が起こることがあります。これが受精卵の着床を妨げる原因になることが近年指摘されています。 また、出産後に子宮内膜症が進行していたり、クラミジアなどの感染症によって卵管が詰まってしまったりしているケースも少なくありません。
③ 男性側の要因(精子の質の低下とプレッシャー)
不妊の原因の約半数は男性側にあることは広く知られていますが、二人目不妊においても例外ではありません。 ご主人様も同じように年齢を重ねており、仕事での責任が重くなる年代でもあるため、過度なストレスや疲労、睡眠不足、不規則な食生活などによって、精子の運動率や濃度が一人目の時より低下していることがよくあります。 また、「排卵日だから」というプレッシャーが心因性のED(勃起不全)を招いてしまうケースも珍しくありません。
④ 育児や仕事の疲労による「セックスレス・タイミングの減少」
上の子のお世話や夜泣き、日々の家事、そして職場復帰など、一人目の時とは比べ物にならないほど、日々の生活は慌ただしくなります。体力的な疲労や、夫婦二人きりでゆっくり過ごす時間の減少により、必然的に性交渉の回数が減ってしまうことは、現代の夫婦にとって非常に切実な問題です。タイミングをとる回数が減れば、当然ながら妊娠の確率も低下してしまいます。
⑤ 授乳やホルモンバランスの影響
産後、長期間にわたって授乳を続けている場合、「プロラクチン」という母乳を作るホルモンが高い状態が続きます。このプロラクチンには排卵を抑える働きがあるため、月経が再開していても、実は無排卵であったり、黄体機能不全(着床しにくい状態)を引き起こしていたりすることがあります。
3. 「もしかして二人目不妊?」クリニックを受診するタイミング
「まだ頑張れば自然にできるかもしれない」と自己流のタイミング法を続けているうちに、貴重な時間が過ぎてしまうことは、生殖医療の観点からは非常にもったいないことです。
では、いつクリニックへ相談に行けばよいのでしょうか。 日本産科婦人科学会では、不妊症の定義を「1年間」としていますが、年齢などを考慮し、以下のような基準で早期の受診をご検討ください。
- 35歳未満の方: 避妊をやめて自己流でタイミングをとってから「1年」が経過している場合。
- 35歳以上の方: 半年(6ヶ月)トライしても妊娠に至らない場合は、1年を待たずに受診を推奨します。
- 40代の方、または月経不順がある方: 期間に関わらず、二人目を望まれた時点で早めに検査を受けることをお勧めします。
「異常がなければそれで安心」というお守り代わりのつもりで、まずは現状のからだのパラメーター(AMHや精子の状態など)をチェックしにいらしてください。
4. 二人目不妊の検査と治療の進め方
クリニックでの二人目不妊の治療は、基本的には一人目の不妊治療と同じステップを踏みますが、「過去の妊娠歴」があるからこそ省ける検査や、逆にしっかり調べるべき検査(子宮内の傷の確認など)を専門医が見極めて進めます。
【主な検査】
- 超音波検査(子宮や卵巣の状態、卵胞の発育確認)
- 血液検査(ホルモン値やAMH=卵巣予備能の測定)
- 精液検査(現在の精子の状態を再確認)
- 卵管造影検査(卵管が通っているかの確認)
【治療のステップアップ】 検査結果に明らかな異常がなければ、排卵日を正確に予測する「タイミング法」からスタートし、その後「人工授精」、そして「体外受精・顕微授精(高度生殖医療)」へと、お二人の年齢や希望に合わせて治療の階段を上っていきます。
💡 知っておきたい:二人目の保険適用ルールについて 2022年から不妊治療(人工授精と体外受精) が保険適用となりましたが、体外受精などの回数制限(40歳未満は1子につき6回まで、40歳以上43歳未満は3回まで)は、「1子ごと」にリセットされます。つまり、一人目を保険適用で授かって無事に出産された場合、二人目の治療に臨む際には、治療開始時の年齢に応じて、また新たな保険適用の回数枠を使って治療を受けることが可能です。
5. 上の子を育てながらの通院への不安について
「治療を始めたいけれど、上の子を連れて通院できるのか」 「仕事と育児、さらに通院となるとパンクしてしまいそう」
こうした現実的な壁に直面し、治療をためらう方も多いでしょう。不妊治療クリニックの多くは、感染症対策や、一人目不妊で深く悩まれている患者様への精神的な配慮から「お子様連れでの来院」にルールを設けている場合があります。
さっぽろARTクリニックn24は「キッズルーム」が完備されています。お子様連れでの来院の際には、そちらでお待ちいただけます。
通院の際は、ご主人様とスケジュールを調整したり、ご両親や一時保育(ファミリーサポートなど)を活用したりと、周囲のサポートを遠慮なく頼ることが不可欠です。 当院(さっぽろARTクリニックn24)でも、患者様お一人おひとりの生活背景を伺いながら、通院回数をなるべく少なくする治療スケジュールの工夫や、柔軟な働き方に合わせた治療計画をご提案できるよう、医師・スタッフが連携してサポートしております。
まとめ:まずは「今のからだを知る」ことから
二人目不妊(続発性不妊)は、年齢や産後の身体の変化など、一人目の時にはなかった要因が影響していることが多くあります。
「なかなか二人目が来ない」と気になり始めた時が、受診のタイミングです。さっぽろARTクリニックn24では、患者様のライフスタイルに寄り添いながら、最適な治療をサポートいたします。まずは検査だけでも構いませんので、リラックスした気持ちでご来院ください。
専門的な情報・相談窓口リンク(外部サイト)
- ART治療を再開し、ARTで2人目の子供を授かった女性の累積生児出生率
Cumulative live birth rates for women returning to ART treatment for a second ART-conceived child - 生殖補助医療によって出産経験のある女性における自然妊娠の頻度はどのくらいか?系統的レビューとメタ分析
How common is natural conception in women who have had a livebirth via assisted reproductive technology? Systematic review and meta-analysis - 令和4年度 内閣府委託事業 我が国及び諸外国の少子化の状況等に関する調査 【全体版】
https://www.cfa.go.jp/resources/research/other/shogaikoku - 札幌市:不妊・不育専門相談:https://www.city.sapporo.jp/eisei/funin/soudan.html
あわせて読みたい関連記事
- 年齢で変わる不妊治療の成功率|データから紐解くタイムリミットと40歳・43歳の保険ルール
- 不妊治療はいつから始めるべき?年齢別の受診目安とクリニックへ行くタイミングを専門医が解説
- 当院の体外受精(ART)の具体的な治療方針や費用、流れについてはこちら:
➔ さっぽろARTクリニックn24:体外受精について
監修: さっぽろARTクリニックn24 院長 藤本 尚









こんにちは。さっぽろARTクリニックn24の院長・藤本です。
当院の診察室には、初めての妊娠を目指す方だけでなく、「一人目はスムーズに授かったのに、二人目がなかなかできなくて……」と、深く悩まれて来院されるご夫婦が数多くいらっしゃいます。
「周囲から『二人目はまだ?』と無邪気に聞かれるのがつらい」 「一人子どもがいるのだから贅沢な悩みだと思われそうで、誰にも相談できない」 「年齢的なリミットを感じて焦っているけれど、上の子を育てながら通院できるのか不安」
こうした「二人目不妊」特有の孤独感や葛藤を抱え、ひとりで涙を流されるお母様たちを、私はこれまで数え切れないほど診てきました。
実は、不妊治療を経験される方のうち、およそ2〜3割がこの「二人目不妊(医学用語では続発性不妊といいます)」に該当すると言われています。決してあなただけが抱えている特別な悩みではありません。
今回は、一人目の時とからだの中で何が変わっているのか、二人目不妊を引き起こす主な原因、そして札幌で治療を始める際のタイミングや心構えについて、専門医の視点から詳しく、そして分かりやすくお話しさせていただきます。