『with up! 』 こどもが欲しい”という御夫婦の思いにお応えするために、原因を徹底的に調べ、ひとりひとりに合わせた最適な治療を提供いたします。

妊活中におすすめの食べ物と生活習慣改善のコツを専門医が解説 | さっぽろARTクリニックn24

院長写真
院長

こんにちは。不妊治療専門クリニック「さっぽろARTクリニックn24」の院長・藤本です。

「今、自分たちにできる最善のアプローチは何だろう?」と、日々の生活の中で前向きな一歩を模索されている方も多いのではないでしょうか。

高度生殖医療をはじめとする不妊治療において、お薬や注射、培養技術といった医療の力は非常に強力です。しかし、それらの医療の効果を120%引き出し、最終的に「妊娠・出産」というゴールへ結びつけるための土台となるのは、お二人自身の日々の食事や生活習慣です。

診察室でも、患者様から「治療の効果を高めるために、普段の食事は何を意識すればいいですか?」「採卵や胚移植に向けて見直すべき習慣はありますか?」という切実なご質問をよくいただきます。

今回は、一般的な妊活マニュアルとは違う視点から、「現在行っている不妊治療の成果を最大化させる」という明確な目的に絞った食事と生活習慣のポイントを、専門医の視点から誠実にお伝えします。

1. 採卵・胚移植の成功率を最大化させる「食事と栄養」の選択

不妊治療における食生活のゴールは、単に「健康になること」だけではありません。「良好な卵子や精子を育て、受精卵をふかふかの子宮内膜で迎えるための細胞レベルの環境づくり」です。治療の各ステップを有利に進めるために、特に意識して底上げしていただきたい栄養素をご紹介します。

卵子・子宮内膜の重要な材料となる「タンパク質」

体外受精における採卵に向けて複数の卵胞を育てる際、また胚移植に向けて子宮内膜を厚くしていく際、そのすべての細胞や女性ホルモンの材料となるのが「タンパク質」です。

現代の女性は、忙しさからパンや麺類などの炭水化物に偏りやすく、慢性的なタンパク質不足に陥っているケースが少なくありません。タンパク質が不足すると、卵胞の育ちが思わしくなかったり、子宮内膜の厚みが目標値(当院では基本8mm以上)に達しにくくなったりするリスクがあると考えています。

食事の際は、お肉、お魚、卵、大豆製品、乳製品といった質の良いタンパク質を、毎食のメニューに2種類以上組み合わせるイメージを持つと、体への吸収効率が良くなり、治療を支える心強い土台となります。

妊娠準備を進める上で意識したい「ビタミンD」と「葉酸」

日々の食生活の中で、健やかな妊娠準備(プレコンセプションケア)をサポートする大切な栄養素として知られているのが「ビタミンD」「葉酸」です。これらは、現在の不妊治療を身体の裏側から支える役割を持っています。

  • ビタミンD: 近年の生殖医学において、全身の健康維持や、健やかな妊娠準備に関わる重要な栄養素として注目されています。不妊治療を受けられている方の中にビタミンD不足が見られるケースがあるという報告もあり、日々の意識的な補給が勧められます。鮭やマグロなどの魚類、キノコ類を食事に取り入れるほか、天気の良い日は適度な日光浴(1日15〜20分程度)をして、体内で合成を促す工夫も有効です。
妊娠準備の体づくりをサポートするビタミンDを多く含む食品のイラスト。サケ、サンマ、イワシ、カレイ、ブリ、しらす干しといった豊富な魚介類や、干ししいたけ、きくらげなどのキノコ類といった、ビタミンD補給におすすめの食材一覧。
  • 葉酸: お腹の赤ちゃんのすこやかな発育(神経管閉鎖障害のリスク低減)のために、妊娠前から十分に摂取しておくことが非常に大切とされる栄養素です。厚生労働省からも、妊娠を計画している女性に対して、食事に加えてサプリメントなどから1日400μgの葉酸を継続して摂取することが推奨されています。ほうれん草やブロッコリーなどに含まれますが、毎日の確実な補給のために、サプリメントを上手に併用するのが確実な方法です。
赤ちゃんのすこやかな発育のために妊娠前からの摂取が推奨される葉酸を多く含む食品のイラスト。ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス、枝豆などの緑黄色野菜、いちご、のり、納豆、レバーといった、妊活中に意識して摂りたい代表的な食材一覧。

健やかな体づくりを支える「抗酸化ミネラル・ビタミン」

私たちの体の中では、日々の生活の中で細胞を酸化(老化)させる「活性酸素」という物質が生まれます。ストレスや不規則な生活、喫煙などは、この活性酸素を過剰に増やす要因となり、全身の健やかさに影響を与えてしまいます。

この活性酸素に対抗する「抗酸化作用」を持つ栄養素や、基本的な代謝を支えるミネラルを日々の食事の中にバランスよく取り入れることも、健康的な体づくりの大切な第一歩です。

  • 亜鉛・鉄分: 亜鉛は、全身の細胞分裂や健やかな代謝をサポートするために不可欠なミネラルです。また、鉄分は体内に酸素を運ぶための血液(赤血球)の重要な材料となります。特に女性は不足しやすいため、レバーや赤身肉、カツオなどから意識的に摂取するのがおすすめです。
亜鉛を多く含む食品(Zn)をカテゴリ別に網羅したイラスト図解。カキやサバなどの魚介類、アーモンドやカシューナッツの種実類、豚レバーや牛肉赤身の肉類、納豆や豆腐の豆類、ワカメやのりの藻類など、妊活中にバランスよく取り入れたい代表的な食材一覧。
  • ビタミンC・E: 細胞の酸化を防ぐ一般的な抗酸化作用を持つビタミンです。ビタミンEはアーモンドやアボカドに、ビタミンCはパプリカやキウイフルーツに豊富に含まれており、日々の体調管理に役立ちます。
体調管理を支える抗酸化作用を持つビタミンEを多く含む食品のイラスト。アーモンドなどのナッツ類、アボカド、かぼちゃ、モロヘイヤ、ピーマンなどの野菜類、植物油、ツナ缶、うなぎなど、毎日の食事に取り入れやすいビタミンE豊富な食材一覧。

日々の体調を整えるための「血糖値コントロール」

食事の「中身」だけでなく、「食べ方」を意識して日々の体調を整えることも大切です。

空腹の状態で甘いお菓子や炭水化物をドカ食いすると、血糖値が急激に上昇し、その反動で急激に低下します。この血糖値の乱高下は、食後の強い眠気やだるさ、心身の体調の波を引き起こしやすくなります。

また、血糖値を安定させることは、余分な脂肪を溜め込みにくい(適正体重を維持しやすい)体づくりにも繋がります。食事の際は「野菜やスープ(食物繊維・水分)を先に食べ、最後にご飯(炭水化物)を食べる」というベジファーストの習慣や、白米を玄米やもち麦に変えるといった工夫で、血糖値を緩やかに上げる工夫を試してみてください。

▼血糖値については、こちらも参考になりますよ!

糖尿病予防のためのルーティーン | とうきょう健康ステーション | 東京都

2. 治療の効果を最大限に引き出す「生活習慣」の最適化

どれだけ食事に気を配っていても、土台となる生活のリズムが崩れていては、お薬や注射の効果が半減してしまいます。ホルモンバランスを正常に保ち、子宮や卵巣への血流を促すための具体的な基準をお伝えします。

適正体重(BMI)の維持と排卵誘発への影響

不妊治療において、太りすぎ(肥満)も痩せすぎ(低体重)も、ホルモン分泌に悪影響を与えます。特に過度なダイエットによる痩せすぎは、脳が「妊娠を維持できる状態ではない」と判断し、生理不順を招きます。肥満は、妊娠した際には妊娠糖尿病の発症リスクを高め、妊娠後半期には妊娠高血圧症候群のリスクとなるため、母子共に危険にさらされるリスクが上昇していまいます。

医学的に最も妊娠率が高く、不妊治療がスムーズに進みやすいとされる理想的な体型は、BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が20〜24の範囲です。治療中の薬のポテンシャルを最大限に活かすためにも、無理のない範囲で適正体重に近づける意識は非常に有効です。

睡眠の質と時間:卵子を守る「メラトニン」の重要性

睡眠不足や不規則な生活は、自律神経を乱して不妊治療に必要な女性ホルモンの分泌を抑制してしまいます。

また、夜間に睡眠をしっかりとることで分泌される「メラトニン」という睡眠ホルモンには、強力な抗酸化作用があります。このメラトニンは、卵子を包む「卵胞液」の中にも多く含まれており、成長中の卵子を活性酸素のダメージから守るバリアのような役割を果たしています。

あるグループの生殖医療に関する研究では、「1日7時間前後の良質な睡眠」をとっているグループは、睡眠不足のグループに比べて採卵時の卵子の質や受精率が良好である、という研究結果を報告しています。

血流アップのための「適度な有酸素運動」

「治療の成果を高めるために運動をしなきゃ」と、息が上がるようなハードなランニングや激しい筋トレを行うのは、実は不妊治療中においては逆効果になることがあります。過度な運動は体内に大量の活性酸素を発生させ、かえって卵子を傷つけてしまうリスクがあるからです。

不妊治療中に最もおすすめなのは、「心地よいと感じる程度の有酸素運動(ウォーキングや軽いストレッチ、ヨガなど)」を週に2〜3回、じんわり汗をかく程度に行うことです。これにより、骨盤内の血流が格段にアップし、治療で使用しているお薬や注射の成分、精度を高めた栄養を、ダイレクトに卵巣や子宮へと届けることができるようになります。

3. 体外受精の成否にも関わる、パートナー(男性側)の生活習慣

不妊治療の原因の約半数は男性側(男性不妊)にあります。そして、顕微授精(ICSI)などの高度な医療技術をもってしても、「精子そのもののDNAの質」が悪ければ、受精卵の分割が途中で止まってしまい、胚盤胞まで育たない、あるいは着床しないという結果につながってしまいます。採卵日に向けて最高の精子を準備するために、パートナーにぜひ守っていただきたいこと3つを述べていきます。 

精子のDNA損傷を防ぐための「禁煙」

精子は毎日新しく体内で作られていますが、作られてから射精されるまでにおおむね3ヶ月近い時間がかかります。つまり、採卵日当日の精子の質は、過去3ヶ月の習慣の集大成です。

特に「喫煙」は、精子の濃度や運動率を著しく低下させるだけでなく、精子のDNAをズタズタに傷つける(精子DNAの断片化)最大の要因になります。女性側の受動喫煙も卵巣機能を低下させることが明確に分かっています。採卵の成果を高めるためにも、ご夫婦そろっての禁煙は必須条件です。

精巣を熱から守る「局所の温度管理」

精子を作る工場である精巣(睾丸)は、熱に非常に弱いというデリケートな性質を持っています。毎日の長風呂やサウナ、膝の上での長時間のノートパソコン作業などは、精巣の温度を上昇させ、精子の製造ラインをストップさせてしまいます。大切な採卵周期の間は、サウナ等は少しお休みし、下着を風通しの良いトランクスに変えるなど、「精巣を涼しく保つ」工夫を徹底してください。

禁欲期間の誤解:溜めた精子は質が落ちる

「採卵日に向けて、精子をたくさん溜めておいたほうが良い結果になるのではないか」というお話をよく耳にします。しかし、これは生殖医学においては大きな誤解です。

禁欲期間(射精をしない期間)が長くなればなるほど、古い精子が精巣の中に滞留し、活性酸素の ダメージを受けて精子のDNAが傷つき、運動率が急激に落ちていきます。

 WHOの精液検査マニュアル(第6版・2021年)では禁欲期間2〜7日を定めていますが、これは「精液検査のための基準」であり、治療・妊娠目的の最適日数ではないことが同マニュアル内でも明記されています。近年の生殖医療の研究では、ART(体外受精・顕微授精)においては1〜2日程度の短い禁欲期間の方が精子の運動率が高く、臨床妊娠率・生児獲得率が良好とする報告が複数発表されています(Fertil Steril, 2017 / 2023)。

さっぽろARTクリニックn24による、禁欲期間と精子の品質数値(運動率・断片化率)の相関グラフ。禁欲期間が1日から10日以上へ伸びるにつれ、青緑色の精子運動率ラインが65%から30%へ低下し、オレンジ色の精子DNA断片化率ラインが12%から42%へ上昇する推移を示している。出典としてUrology 2016 (94, 102-110) および PMC5714597 (2,458例の精液分析) が明記されている。

具体的な採精日数については、担当医の指示に従ってください。

4. 【あわせて読みたい】当院のコラム

本記事でご紹介した「食事・生活習慣」をベースとした上で、さらに具体的な不妊治療の仕組みや、妊活の初期段階における健康管理について知りたい方は、以下の当院コラムも合わせて参考にしてください。

5. まとめ:心と体のバランスを大切に

食事や生活習慣を整えることは、不妊治療の成果を支えるために確かに大切です。しかし、最も避けていただきたいのは、「あれを食べてしまったからダメだったのかな」「今週は運動ができなかった」と、ご自身を責めてストレスを抱えてしまうことです。

過度な義務感や焦りは、かえって自律神経を乱し、ホルモンバランスに悪影響を与えてしまいます。「できる日に対策をすればOK」という大らかな気持ちを持つことも、健やかな妊娠に向けた大切な医療の一部です。

僕はよく、あんまり目を血走らせて頑張りすぎたらだめだよ!と言うんですが、ついつい目が血走っちゃうんですよね。気になってしまうのはわかりますが、受診するのは月に数日で残りのほとんどは通院しない日になるので、その日までいつも考えていると疲れてしまいます。きちんと通院日は頑張って通院し、ほかの日は『日々の生活を楽しむというのも大事!』ということをお伝えしておきます。

→ 初診・ご相談のご予約はこちら

参考情報

監修: さっぽろARTクリニックn24 院長 藤本 尚

最終更新: 2026年6月