1. プレコンセプションケア(PCC)とは?男性が知っておくべき「将来への備え」
プレコンセプションケアという言葉を初めて耳にする方も多いでしょう。「プレ(Pre)」は「〜の前」、「コンセプション(Conception)」は「受胎(妊娠)」を意味します。つまり、「将来、授かる新しい命のために、妊娠前から自分たちの健康を管理すること」です。
2013年にWHO(世界保健機関)が提唱したこの概念は、単なる「妊活の準備」に留まりません。今を健康に過ごすことが、数年後のあなた自身の健康を守り、ひいてはパートナーや将来授かるかもしれない赤ちゃんの健康リスクを低減させることにつながります。
男性にとっても、PCCは「自分事」です。現在の生活習慣を見直すことは、今の自分のパフォーマンスを上げること、そして未来の家族を守るための「先行投資」であると考えてみてください。
プレコンセプションケアチェックシート
今の習慣を、まずは振り返ってみませんか。
パートナーと一緒に、一つずつチェックのつく項目を増やしていければ素敵です。

2. なぜ男性の生活習慣が重要?精子の質と不妊の意外な関係
「自分は元気だから大丈夫」と思っていても、目に見えない「精子の状態」は日々の生活習慣によって大きく左右されます。ここでは、男性が知っておくべき2つの重要な事実をお伝えします。
事実①:不妊要因の約50%は男性側にある
WHOの調査では、不妊症の原因要因の約半数に男性側が関与していることが明らかになっています。不妊治療は女性だけが頑張るものではなく、最初から二人三脚で取り組むべきものなのです。
事実②:精子は「約74日間」で作られる
精子は毎日新しく作られていますが、形成が始まってから成熟して放出されるまでには約74日間(約3ヶ月)かかります。つまり、今あなたが取り組む生活習慣の改善が、約3ヶ月後の精子の質として現れるのです。精子はあなたの体調を映し出す鏡のような存在であり、日々のケアによってその質をより良いものへ変えていくことができます。
3. 【専門医推奨】精子のためにできる10のこと|男性版プレコンセプションケア
具体的にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。今回は男性に焦点を当てて 、特に意識していただきたい10の習慣を解説します。
① 禁煙:精子の運動率とDNA、そして自分と家族の健康を守る第一歩
タバコに含まれる多くの有害物質は、精子の数や運動率を低下させるだけでなく、精子のDNAにダメージを与える可能性があることが報告されています。また、パートナーへの受動喫煙も妊娠後の胎児の発育に悪影響を及ぼす恐れがあります。お二人で足並みを揃えて禁煙に取り組むことが、最も効果的なケアの一つです。
② 下着の選択:精巣を「熱ダメージ」から守る通気性の重要性
精子は熱に非常に弱く、精巣(睾丸)の温度は体温より2〜3度低い状態が理想です。タイトな下着や厚手のボクサーパンツは熱がこもりやすいため、通気性の良いトランクス等の使用が推奨されます。
③ アルコール:週2日の休肝日でホルモンバランスを整える
過度の飲酒は、精子を形成するホルモンのバランスを崩す原因となります。お酒を嗜む場合は適量を守り、少なくとも週に2日は「休肝日」を設けることで、からだ全体のコンディションを整え、生殖機能を健やかに保ちましょう。
④ 入浴・サウナ:精子の天敵「高温」を避ける日常生活の工夫
長時間のサウナや熱いお湯での長風呂は、精巣の温度を著しく上昇させ、一時的に精子の機能を低下させることがあります。妊活を意識している期間は、サウナや長湯を控えめにする、あるいは回数を調整するなどの工夫が有効です。
⑤ 自転車・バイク:長時間の圧迫を避けて血流を確保する
サドルによる長時間の圧迫や、走行時の摩擦熱は、精巣周囲の血流や温度に影響を及ぼすことがあります。長距離のサイクリングやバイク走行が習慣の方は、適度に休憩を挟んで圧迫を解放するなどの配慮をしましょう。
⑥ 職業・環境:放射線や有機溶剤から自分自身を守る意識
仕事上で放射線や特定の化学物質(殺虫剤、有機溶剤など)に触れる機会がある場合は、適切な防護策を講じることが重要です。これらは精子の形成過程に直接的なダメージを与えるリスクがあるため、職場環境の安全を確保しましょう。
⑦ 育毛剤(フィナステリド等):使用前に知っておきたい副作用
一部の育毛剤に含まれる「フィナステリド」や「デュタステリド」は、男性ホルモンに働きかけるため、副作用として精子数の減少や射精障害、ED(勃起不全)を引き起こす可能性があります。使用中の方は必ず主治医に相談し、妊活中の継続の是非を確認してください。
⑧ 規則正しい生活:抗酸化作用(ビタミンC・E)を意識した食事と睡眠
精子は酸化ストレスに弱いため、抗酸化作用のあるビタミンCやE、亜鉛などを含むバランスの良い食事を意識しましょう。当院では「まごわやさしい」の食材を推奨しています。また、良質な睡眠はホルモン分泌を正常に保つ土台となります。

⑨ パソコン操作:膝上使用による睾丸の温度上昇に注意
ノートパソコンを膝の上で長時間使用すると、バッテリーの熱と足の密着により、睾丸温度が2.5℃上昇するという報告があります。精子の質を守るため、パソコンはできるだけデスクに置いて使用するようにしましょう。
⑩ 禁欲期間:DNA損傷を防ぐ「2〜7日間」の理想的な頻度
「精子を溜めた方がいい」というのは大きな誤解です。禁欲期間が長すぎると、精子の運動率が低下し、古い精子が酸化してDNAが損傷した精子の割合が増えてしまいます。2〜7日間程度の適度な頻度で射精することが、精子の質を保つのに理想的です。

4. 今日から実践!プレコンセプションケアを無理なく続けるコツ
一度にすべてを変えようとすると、それがストレスになり逆効果になることもあります。まずは以下のようなステップで取り組んでみてください。
- 「すぐできること」から始める: ノートPCの使い方を変える、下着をトランクスにするなど、今日から変えられることはすぐに実行しましょう。
- 「引き算」の意識: タバコを減らす、サウナの頻度を下げるなど、まずは「マイナス要因」を取り除くことから始めます。
- 3ヶ月を1サイクルに: 精子の形成サイクル(約3ヶ月)を意識し、まずは3ヶ月間、無理のない範囲で続けてみてください。
5. カップルで取り組むことのメリット
プレコンセプションケアは、女性だけでも、男性だけでも完結しません。
当クリニックが掲げる理念『With Up』には、患者様に寄り添うだけでなく、「パートナーとお互いに寄り添い、高め合う」という意味も込められています。二人で一緒に健康について話し合い、生活習慣を整える過程そのものが、将来の育児や家族生活に向けた大切なコミュニケーションの場となります。
「まだ不妊治療を考えているわけではない」という方こそ、将来の選択肢を広げるために、このケアを始めていただきたいと願っています。
6. 男性版プレコンセプションケアに関するよくある質問(FAQ)
Q. プレコンセプションケアは何歳から始めるべきですか?
A. 妊娠を希望する数年前からでも早すぎることはありません。特に男性の場合、現在の健康状態が将来の精子の質に直結するため、20代、30代から意識しておくことは非常に有益です。
Q. サプリメントは飲んだほうがいいですか?
A. 基本は食事ですが、不足しがちな亜鉛、ビタミンC、ビタミンE、L-カルニチンなどの摂取は精子の質をサポートする助けになります。当院でも適切なアドバイスを行っております。
Q. 一度悪くなった精子の質は戻りますか?
A. 生活習慣による一時的な低下であれば、改善によって質が向上する可能性は十分にあります。まずは約3ヶ月の継続を目標にしましょう。
7. さっぽろARTクリニックn24のサポート体制|まずは現状の把握から
自分に何が必要かを知るためには、まずは「現在の状態」を正しく把握することが第一歩です。
当院では、不妊治療で受診された場合、女性にはAMH検査(卵巣予備能検査)を、同様に男性には精液検査を実施しています。
札幌市北区の身近な相談窓口として、私たちは皆さまの「未来への準備」を誠心誠意サポートいたします。
まずはお気軽にご相談ください。
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参考情報
監修: さっぽろARTクリニックn24 院長 藤本 尚
最終更新: 2026年5月








「妊活や不妊治療は女性が主体となって進めるもの」——もしあなたがそう考えているとしたら、それは少し古い常識かもしれません。
こんにちは。札幌市北区の不妊治療専門クリニック、さっぽろARTクリニックn24の藤本です。
近年、世界的に注目されているのが「プレコンセプションケア(Preconception Care)」という考え方です。これは、将来の妊娠を計画している方はもちろん、すべての妊娠可能年齢の方々が、自分自身の健康をより良い状態に整えるためのケアを指します。
今回は特に「男性」にスポットを当て、精子の質を保ち、将来の家族を支えるための心身の整え方について、専門医の視点から詳しく解説します。