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調節卵巣刺激法(誘発方法)の種類とスケジュールを解説|検査室だより – さっぽろARTクリニックn24

検査室

皆さんこんにちは!検査室スタッフです。

今回は当院で実際に行っている採卵のための誘発方法(調節卵巣刺激法)について詳しくご説明します。

以前お話しした、排卵周期の基本調節卵巣刺激法の基本の記事を合わせてご覧いただくと、より分かりやすいと思います!

黄体ホルモン併用卵巣刺激法(Progestin-primed Ovarian Stimulation:PPOS法)の仕組みとスケジュール

PPOS法は、排卵を抑えるために「黄体ホルモン(プロゲスチン)の飲み薬」を使用する比較的新しい方法です。黄体ホルモンには、妊娠状態を維持する働きのほかに、強い排卵抑制作用があります。この方法は内服薬で排卵を抑えることが出来るため、近年はこの方法をする人が増えています。

 PPOS法(黄体ホルモン併用卵巣刺激法)の仕組みと採卵までの治療スケジュールを表した図解

 

ただし、黄体ホルモンの影響で子宮内膜が着床に適さない状態になるため、採卵した周期にそのまま移植(新鮮胚移植)をすることはできません。獲得した胚は必ず一度凍結することになります。

トリガーにGnRHアゴニスト製剤を選べるためOHSSのリスクを低く抑えられ、さらに注射の使用本数が少なく済むため、身体への負担や費用も抑えられるというメリットがあります。そのため近年、実施頻度が増えています。

知っておきたい基本用語:アゴニストとアンタゴニスト

まずは、今回の解説で重要になるホルモンやお薬の用語について説明します。

  • アゴニスト:受容体に結合して、細胞内へ情報伝達を引き起こす(スイッチを入れる)物質です。
  • アンタゴニスト(アンチアゴニスト):アゴニストの働きをブロック(阻害)する物質です。
不妊治療、調節卵巣刺激法(誘発方法)の解説に際し、アゴニストとアンタゴニストの機能の図解

当院では、患者様がご自宅で行う「自己注射」の指導を事前に看護師が行うため、誘発剤を打つためだけの連日の来院は基本的に必要ありません。それでは、各誘発方法の仕組みとスケジュールを見ていきましょう。

図では誘発剤の役割をそれぞれ三色で、記号は以下の通りで表しています。

調節卵巣刺激法(誘発方法)の種類とスケジュール解説の図解に使用する記号の説明

※誘発開始前に看護師が自己注射の指導をするので、誘発剤投与のための来院は基本的に必要ありません。

※D1=生理1日目(来院タイミングは目安です)

アンタゴニスト法の仕組みとスケジュール

アンタゴニスト法による調節卵巣刺激法の治療スケジュールと排卵抑制の仕組みを表した図解

アンタゴニスト法は、アンタゴニスト製剤を使って、体が自然にFSHやLHといったホルモンを出してしまうのを抑える方法です。

1. 排卵を抑制して卵を育てる

アンタゴニスト法における卵胞発育の仕組み。アンタゴニスト製剤で下垂体からのホルモン分泌をブロックし、排卵を抑制しながら卵を育てる図解

2. 排卵のスイッチを入れる

FSH/hMG製剤(卵を育てる注射)の投与によって卵胞が十分な大きさに育ってきたところで、アンタゴニスト製剤を投与し、勝手に排卵してしまうのを防ぎます。その後、採卵の時間に合わせてGnRHアゴニスト製剤を投与し、卵の成熟を促します。

アンタゴニスト法における採卵直前の仕組み。GnRHアゴニスト製剤の投与により下垂体からLHを分泌させ、排卵のスイッチを入れる図解

トリガー(最後の仕上げの薬)にGnRHアゴニスト製剤を選べるため、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを低く抑えられるのが大きなメリットです。

GnRHアゴニスト法(ショート法)の仕組みとスケジュール

GnRHアゴニスト法(ショート法)は、点鼻薬(アゴニスト製剤)を毎日持続的に使うことで、脳からの排卵スイッチを眠らせ、勝手な排卵を抑えながらFSH/hMG製剤(注射)で卵を育てる方法です。

GnRHアゴニスト法(ショート法)による採卵までのスケジュールとお薬の投与タイミングを表した図解

1. 卵を育てる

はじめのうちはGnRHアゴニストが下垂体に働いて、FSH分泌を促し、また外部からのFSH/HMG製剤でもFSHを補充することで複数の卵胞発育を促す。

ショート法(GnRHアゴニスト法)の初期段階の仕組み。GnRHアゴニスト製剤によって一時的にホルモン分泌を促し、卵胞を育てる図解

2. 内因性ホルモンによる排卵が抑制される

しばらくするとGnRHアゴニスト製剤の働きが変わり、内因性のLH/FSHの働きが抑えられるため、LH低下により排卵抑制に働きます。一方でFSHも減るので、その分を外部からの注射(HMG製剤など)を行い更に卵胞発育を促す。

ショート法(GnRHアゴニスト法)の中期段階の仕組み。薬の継続投与により下垂体の反応を抑え、内因性ホルモンによる排卵を抑制する図解

3. 排卵のスイッチを入れる

卵胞がしっかり育ったら、採卵の時間に合わせてhCG製剤を投与して卵を成熟させ、排卵を促します。

ショート法(GnRHアゴニスト法)の採卵直前の仕組み。hCG製剤を投与することで排卵のスイッチを入れ、卵子を成熟させる図解

トリガーがhCG製剤になるためOHSSのリスクは高くなりますが、その分、一度に多くの卵胞発育が見込めない方(卵巣予備能が低い方)に対して有効な方法となります。

自然周期・低刺激周期の仕組みとスケジュール

お薬による刺激をほとんど行わず、体が自然に出すホルモン、またはマイルドな飲み薬の刺激だけで卵胞を育てる方法です。

お薬の負担は少ないですが、通院回数が多くなりやすいことや、採卵前に自分の体の中で排卵が始まってしまう(排卵済みで採卵中止になる)リスクなどのデメリットがあります。 ※当院では補助的に少量の注射を足したり、排卵を抑えるお薬を併用したりすることもあります。

まとめ:一人ひとりに合わせた最適な誘発方法を

検査室

これらは生殖補助医療において確立された基本的な方法ですが、お薬への反応性は患者様一人ひとりの体質によって全く異なります。

卵胞の育つスピードや、採卵後の培養結果を見ながら、「次の採卵では別の方法を試す」「お薬の種類や量を調整する」など、患者様に合わせた最適な方法を模索していきます。

規則的な通院や自己注射、お薬の服用など、採卵に向けては心身ともに負担が大きいかと思います。「何のために、どう効いているお薬なのか」を少しでも理解していただくことで、安心して治療に臨んでいただければ幸いです。