『with up! 』 こどもが欲しい”という御夫婦の思いにお応えするために、原因を徹底的に調べ、ひとりひとりに合わせた最適な治療を提供いたします。

不育症とは?原因・検査・治療を不育症認定医が解説| さっぽろARTクリニックn24

副院長で不育症認定医の山本貴寛医師の写真
副院長

はじめまして。副院長の山本貴寛です。今後は私も記事執筆していきたいと思います。私は不妊症はもちろんですが不育症にも力を入れており、全国的にも数少ない日本不育症学会の不育症認定医として、一人でも多くの方に赤ちゃんを抱いていただけるよう、丁寧な検査と治療に取り組んでいます。よろしくお願いします。

副院長で不育症認定医の山本貴寛医師の写真
hu

不育症とは、妊娠はできるのに流産・死産を繰り返してしまう状態のことです。「また流産してしまった」「次も同じになるのでは」という不安や悲しみを抱えて受診される方は少なくありません。不育症には原因があり、その原因に合わせた治療を行うことで次の妊娠・出産につながるケースも多くあります。まずは現状を正確に把握することが重要になります。

不育症とは

不育症とは、妊娠はするものの流産・死産を繰り返し、赤ちゃんを産むことができない状態のことです。日本不育症学会および日本産科婦人科学会では「流産あるいは死産が2回以上ある状態(生児の有無は問わず、連続していなくてもよい)」と定義しています。

なお、妊娠反応は陽性だったものの超音波で胎嚢が確認される前に消失する「生化学妊娠」は不育症には含まれません。

不育症と習慣流産の違い

用語定義
不育症流産・死産が2回以上(連続でなくてよい。死産を含む)
反復流産2回以上連続する流産(不育症に含まれる)
習慣流産3回以上連続する流産(不育症に含まれる)

さっぽろARTクリニックn24では、2回以上の流産・死産があった場合から不育症の検査・相談に対応しています。

不育症はどのくらいの頻度で起こる?

流産は妊娠全体の約15%に起こります。子どもの健康と環境に関する全国調査(1)によれば、2回以上の不育症は5.0%、3回以上の習慣流産は1.1%の頻度でした。また、流産の頻度は年齢とともに上昇し、40代では30%以上に達します。

1〜2回の流産は胎児の染色体異常(偶発的なもの)によるケースがほとんどです。しかし繰り返す場合は背景にリスク因子がある可能性が高まるため、検査を受けることをお勧めします。

不育症の原因・リスク因子

不育症の4大原因は、①胎児染色体異数性、②抗リン脂質抗体症候群、③先天性子宮形態異常、④カップルの染色体異常です(2)。

かつては「原因不明が約50%以上」と言われていましたが、それは流産時の胎児染色体検査が行われないケースが多いためです。研究的に胎児染色体検査を行った482組の調査(3)では、胎児染色体異数性が41%と最も多い原因でした。これらを含めると、真の意味での原因不明は約25%に留まります。

① 胎児染色体異数性(約41%)

流産した胎児・胎芽の染色体に数の異常(トリソミーなど)がある状態です。流産全体の50〜80%に認められ、女性の年齢が上がるほど頻度が高くなります。これは偶発的に起こるもので、ご夫婦の健康状態とは直接関係ありません。

ただし、既往流産回数が多い方では胎児染色体正常の流産が増えることが知られています。体外受精で治療中の方にはPGT-A(着床前染色体異数性検査)が選択肢となる場合があります。

② 抗リン脂質抗体症候群(約10%)

抗リン脂質抗体とは、血液を固まりやすくする自己抗体の一種です。この抗体が存在すると胎盤の血管に血栓が生じ、血流障害によって流産・死産が起こりやすくなります。

検査で抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが12週間以上の間隔で2回続けて陽性の場合に診断されます。低用量アスピリンやヘパリンによる治療が有効で、治療を行った場合の出産率は70〜80%とされています(4,5)。

③ 先天性子宮形態異常(約10%)

子宮中隔・双角子宮など、生まれつきの子宮の形の異常が流産の原因となることがあります。超音波・子宮鏡・子宮卵管造影検査などで診断します。なお、手術(中隔切除術など)の効果については、現時点では研究によって結果が異なり、一定の見解が得られていません(6)。

④ 夫婦いずれかの染色体均衡型転座(約5%)

ご夫婦のどちらかが「均衡型相互転座」「ロバートソン転座」などの染色体構造異常を持っている場合、受精卵に染色体の過不足が生じやすく、繰り返す流産の原因となります。血液検査(染色体検査)で確認できます。PGT-SR(着床前染色体構造異常検査)が有効な選択肢ですが、自然妊娠でも60〜80%は正常な赤ちゃんが生まれるとされており、治療の選択については医師とよく相談することが大切です。

内分泌異常・その他

甲状腺機能異常(TSH・Free T4)や糖尿病(空腹時血糖値・HbA1c)も不育症のリスク因子となり得ます。これらは流産だけでなく妊娠中の胎児発育にも影響することから、日本不育症学会は必要な検査として推奨しています。

不育症の検査

不育症の検査は、ご夫婦で受けていただきます。日本不育症学会は不育症の4大原因を調べる検査と一部内分泌検査につき、学会が推奨する標準的検査として提案しています。

検査項目内容
夫婦染色体検査ご夫婦の血液で染色体の数・構造を確認する
抗リン脂質抗体検査抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなどを調べる
凝固・線溶系検査血液の固まりやすさ(血栓傾向)を調べる
甲状腺機能検査TSH・Free T4を調べる
血糖検査空腹時血糖値またはHbA1cを調べる
子宮形態検査超音波・子宮卵管造影などで子宮の形を確認する
絨毛染色体検査流産時に流産内容物(絨毛組織)の染色体を調べる。胎児染色体異数性の有無を確認できる

絨毛染色体検査と子宮形態検査を除いて、検査は血液検査となります。検査は1〜2回の受診でほぼ完了します。結果が出た後、医師が原因を整理し、治療方針をご説明します。

不育症の治療

検査結果に応じて、以下の治療法が選択されます。

低用量アスピリン+ヘパリン療法

抗リン脂質抗体症候群と診断された場合の標準的治療です。妊娠4週から低用量アスピリンとヘパリン注射を開始し、胎盤への血流を保ちます。治療を行った場合の出産率は70〜80%とされています(4,5)。

PGT-SR(着床前染色体構造異常検査)

ご夫婦のいずれかに染色体均衡型転座がある場合に選択される検査です。体外受精で作成した胚の染色体構造を事前に確認し、流産につながりにくい胚を選んで移植します。

PGT-A(着床前染色体異数性検査)

体外受精で作成した胚の染色体の数を調べ、正常な胚を選んで移植する検査です。ただし、自然妊娠できる不育症の方への出産率改善効果については、現時点では確立されていません(6)。体外受精治療中の方や、胎児染色体異数性が繰り返し確認されている方に検討されます。適応があるかどうかは検査結果をもとに医師がご説明します。

【さっぽろARTクリニックn24】ではPGT-A/SRに対応しています。

原因不明の場合

原因が特定できない場合は、薬剤投与の必要はなく経過観察が基本です。原因不明の不育症の方が次の妊娠をした場合の出産率の目安は以下の通りです(日本不育症学会)。

既往流産回数次回妊娠での出産率の目安
2回約80%
3回約70%
4回約60%
5回約50%

「結果が悪い=子どもができない」ではありません。医師と一緒に現状を確認し、ご夫婦に合った方針を決めていきましょう。

生活習慣の見直しも大切

不育症のリスクを高める生活習慣として、以下の4点が挙げられています。

項目内容
肥満BMIが高いほど流産リスクが上昇することが知られている
カフェインの過剰摂取1日200mg以上のカフェインは控えることが推奨されている
喫煙流産リスクを高めるため、禁煙が推奨される
過度の飲酒アルコールは妊娠への影響があるため控えることが望ましい

これらの改善はすぐに始められる取り組みです。治療と並行して生活習慣を整えることが、妊娠継続率の向上につながります。

不育症と診断されたら何週まで安心できる?

不育症の方が最も心配されることの一つが「いつになったら安心できるか」という点です。

妊娠12週(3か月)を過ぎると、胎児染色体異常による流産リスクは大きく低下します。心拍確認後の妊娠継続率も12週以降は急激に上がるため、一つの目安とされています。

ただし、不育症の中には妊娠12週以降の後期流産・死産(16〜22週)が繰り返されるケースもあります。この場合は抗リン脂質抗体症候群や子宮形態異常が関与していることがあり、より慎重な経過観察が必要です。

「何週まで安心か」は原因や個人差によって異なりますので、担当医と相談しながら妊娠経過を一緒に確認していくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q. 不育症の検査は夫婦二人で受ける必要がありますか?

A. 染色体検査はご夫婦双方の血液が必要です。その他の検査(抗リン脂質抗体・凝固系・ホルモンなど)は主に女性が受けます。なるべくご夫婦一緒に受診いただくことをお勧めします。

Q. 不育症の治療は保険適用されますか?

A. 検査・治療の一部は保険適用です。ただしPGT-A/SRは先進医療(保険との併用が可能な場合あり)または自費診療となります。詳しくはご受診時に医師にご確認ください。

Q. 原因不明でも治療はありますか?

A. 原因が特定できない場合、薬剤投与の必要はなく経過観察が基本です。原因不明の不育症の方でも、次の妊娠で出産できる確率は2回流産後で約80%とされています。担当医と相談しながら一歩ずつ進めていきましょう。

さっぽろARTクリニックn24の不育症外来について

さっぽろARTクリニックn24では、山本貴寛 副院長は日本不育症学会の不育症認定医であり不育症の検査・治療にも精通しています。

「また流産してしまうのではないか」という不安を抱えたまま次の妊娠を迎えることなく、まず原因を調べ、ご夫婦に合った治療方針を立てることが私たちの役割だと考えています。

PGT-A/SRにも対応しており、染色体異常が原因の方にも幅広い選択肢をご提案できます。

→ 初診・ご相談のご予約はこちら

関連記事

参考情報

  1. Sugiura-Ogasawara M, et al. Endometriosis and Recurrent Pregnancy Loss as New Risk Factors for Venous Thromboembolism during Pregnancy and Post-Partum: The JECS Birth Cohort. Thromb Haemost. 2019; 119: 606-617.
  2. THE LANCET: Miscarriage series1, April 26, 2021
  3. Sugiura-Ogasawara M, et al. Abnormal embryonic karyotype is the most frequent cause of recurrent miscarriage. Hum Reprod 2012; 27: 2297-2303.
  4. Kutteh WH. Antiphospholipid antibodies-associated recurrent pregnancy loss: treatment with heparin and low-dose aspirin is superior to low-dose aspirin alone. Am J Obstet Gynecol 1996; 174: 1584-89.
  5. Rai R, et al. Randomised controlled trial of aspirin and aspirin plus heparin in pregnant women with recurrent miscarriage associated with phospholipid antibodies (or antiphospholipid antibodies). BMJ 1997; 314: 253-257.
  6. Coomarasamy A, et al. Recurrent miscarriage: evidence to accelerate action. Lancet. 2021 May 1;397(10285):1675-1682.

監修: さっぽろARTクリニックn24 院長 藤本 尚 / 副院長 山本 貴寛

最終更新: 2026年4月