FT手術(卵管鏡下卵管形成術)とは
FT手術(Falloposcopic Tuboplasty)は、卵管性不妊の方を対象にした内視鏡治療です。卵管の閉塞や狭窄がある部位に、バルーン付きの細いカテーテルと外径0.6mmの極細内視鏡カメラ(卵管鏡)を挿入し、詰まりや狭まりを内側から広げることで卵管の通りを回復させます。
手術はお腹を切開することなく、膣→子宮→卵管の順に器具を進める方法で行われます。治療時間は30〜40分程度で、外来(日帰り)での実施が可能です。
FT手術の3つの特徴
- 日帰りで受けられる: 入院不要。当日は来院から終了まで約6時間程度
- 自然妊娠を目指せる: 卵管の通りが改善されれば、術後にタイミング法・人工授精・自然妊娠を狙える
- 健康保険が適用される: 自己負担3割。高額療養費制度も利用できる
FT手術の適応について
閉塞の場所やタイプによって、FT手術が適応になる場合とならない場合があります。
適応になる方
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 近位卵管に閉塞・狭窄がある | 子宮に近い側(卵管の入口付近)の閉塞・狭窄 |
| ② 卵管が閉塞/狭窄しているものの、タイミング法・人工授精での妊娠を希望 | 体外受精を希望されない・まず卵管の回復を試みたい方 |
適応にならない方
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ③ 卵管膨大部(先端に近い部位)の閉塞・狭窄 | FTカテーテルが届かないため適切な治療が困難 |
| ④ 卵管留水腫(卵管内に液体貯留)がある | FT手術では対応できず、体外受精や腹腔鏡手術が検討される |
FT手術が適応かどうかは、子宮卵管造影検査(HSG)などで卵管の状態を確認したうえで判断します。まずは検査を受け、担当医と相談することが大切です。
手術の流れ(手術手順)
- 静脈麻酔を施行し、麻酔が効いたことを確認してからカテーテルを膣→子宮へ挿入
- 卵管の入口(卵管口)にカテーテル先端を近づける
- バルーンを膨らませながら卵管内へゆっくり進める
- 卵管鏡で内部を確認しながらバルーンで狭窄・閉塞部位を広げる
- 通過障害の改善を卵管鏡で最終確認して終了
麻酔は静脈麻酔を使用するため、「目が覚めたら手術が終わっているような感じ」で痛みをほとんど感じません。
手術当日のスケジュール

手術前日・当日の注意事項
- 手術前日: 食事は前日24時頃までに済ませてください(以降は禁食)
- 手術当日: 午前6時まで少量の水(水のみ)は摂取可能です
手術を受けられる時期
月経終了後(月経開始5〜6日目頃)から排卵までの時期に実施します。排卵時期には個人差があるため、適切な日程は医師と相談しながら決めます。
費用について
保険適用・自己負担額の目安
FT手術は健康保険が適用されます(自己負担3割)。
| 治療範囲 | 自己負担額の目安(3割) |
|---|---|
| 片側治療 | 約14万円 |
| 両側同時治療 | 約28万円 |
※上記費用に対して高額療養費制度が適用されるので、実際に支払う金額は患者様の所得区分によって異なります。
※ 卵管の疎通性が改善されなかった場合でも費用は発生します。
高額療養費制度について
FT手術は高額療養費制度の対象です。マイナンバーカードを保険証として使用している場合、事前申請なしで限度額適用認定が受けられます。
| 区分 | 所得要件(標準報酬月額) | 自己負担限度額(月額) |
|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
| イ | 53万〜79万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
| ウ | 28万〜50万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
| エ | 26万円以下 | 57,600円 |
| オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
※ 2026年1月1日現在の区分です。
民間医療保険の手術給付金
不妊治療開始前に民間医療保険に加入していた場合、FT手術が手術給付金の支払い対象となる可能性があります。ご加入の保険会社にご確認ください。
副作用・リスクについて
- 麻酔薬によるアレルギー・術後の気分不良の可能性(これはFT手術の副作用ではなく手術全般の麻酔時における副作用となります)
- 術後の腹痛・少量の出血・感染の可能性(いずれも多くは一過性)
- 稀に卵管穿孔が起こることがありますが、カテーテルが細いため通常は経過観察のみで対応します
よくある質問(FAQ)
Q. 卵管因子があればすべてFT手術の対象になりますか?
A. なりません。卵管采(先端)部位の閉塞や卵管留水腫がある場合はFT手術の適応外となり、体外受精や腹腔鏡手術が検討されます。まずは子宮卵管造影検査で閉塞の場所・タイプを確認することが必要です。
Q. 手術中は痛くないですか?
A. 静脈麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんど感じません。「気づいたら終わっていた」とおっしゃる方がほとんどです。術後に軽い腹部の違和感が出ることがありますが、多くは当日中に落ち着きます。
Q. FT手術後の妊娠率はどのくらいですか?
A. 卵管の開通率は90%以上、術後の妊娠率は30〜35%(年齢により異なります)とされています(出典:「わが国における生殖補助医療の実態とその在り方に関する研究(1999年)」「産科と婦人科 vol.63 No.1(1996年)」)。なお、術後6か月経過しても妊娠しない場合は体外受精への移行を検討します。
Q. FT手術をすれば必ず妊娠できますか?
A. 必ずしも妊娠できるわけではありません。卵管の開通ができない場合・術後に再閉塞・再狭窄が起こる場合・卵管因子以外の不妊原因がある場合には、妊娠に至らないこともあります。担当医と十分に相談しながら治療方針を決めることが大切です。
Q. FT手術後はすぐに妊活を再開できますか?
A. 術後の状態を確認しながらになりますが、一般的には次の月経後からタイミング法や人工授精を再開することが多いです。詳しくは術後の診察で担当医にご確認ください。
さっぽろARTクリニックn24でのFT手術について
さっぽろARTクリニックn24は、札幌市内においてFT手術(お腹を切開せず子宮鏡下で行う方式)を実施できる施設の一つです。経験豊富な医師が対応しており、「卵管が詰まっていると言われた」「体外受精の前にできることを試したい」という方のご相談を承っています。
まずは子宮卵管造影検査(HSG)でご自身の状態を正確に把握し、FT手術・体外受精を含む最適な治療方針をご提案します。
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参考情報
- 一般社団法人 日本生殖医学会「生殖医療Q&A」
- わが国における生殖補助医療の実態とその在り方に関する研究(1999年)
- 産科と婦人科 vol.63 No.1(1996年)
監修: さっぽろARTクリニックn24 院長 藤本 尚
最終更新: 2026年4月










FT手術(卵管鏡下卵管形成術)は、卵管の閉塞・狭窄を解消するための手術です。お腹を切開せず膣から細いカメラカテーテルを挿入して行うため、身体への負担が少なく、日帰りで受けることのできる手術です。もちろん健康保険が適用される手術となります。「卵管が詰まっているから体外受精でしか妊娠できない」と言われた方でも、近位卵管(子宮に近い部位)の閉塞であれば、FT手術で卵管の通りを回復させることが出来れば、その後の自然妊娠やタイミング法・人工授精による妊娠を目指すことができるようになります。